最近CMなどで「TCL(ティーシーエル)」というメーカーの名前を見聞きすることが
多くなり、どんなメーカーなのか気になってきました。
TCLがどこの国のメーカーで、どんな製品を扱っているのか調べてみます。
TCLはどこの国のメーカー?
「TCL(ティーシーエル)」は、中国の広東省恵州市に本社を置く電機メーカーです。
(https://www.tcl.com/jp/ja/about-tcl)
日本でよく見聞きするようになったのはこの数年ですが、
創業は1981年で40年以上の歴史があります。
恵陽区電子工業と香港企業の合弁会社がTCLの前身で、
当初は磁気テープいわゆるカセットテープを作るメーカーでした。
1989年に固定電話機の生産販売で中国1位になると、
1990年代に入って一気にブレイクします。
1992年にオリジナルブランドのテレビを発売すると中国国内で知名度が高まり、
1996年には香港企業のカラーテレビ事業を買収します。
1997年には社名を現在のTCLに変更、1999年に携帯電話事業に参入すると
販売数が600万台を超える大ヒットとなったのです。
1990年から12年間の成長率が年平均で42.65%という驚異的な数字となり、
中国国内で最も成長の早い企業となります。
TCLの勢いは2000年代に入っても衰えず、2004年にはフランスの
通信機器メーカー・トムソンと合弁会社を設立してテレビ事業の強化を図ります。
日本のパナソニックやアメリカのインテルとも提携を結び、
海外企業の技術を吸収することで世界トップクラスのテレビメーカーへと
成長しました。
2023年時点で、同じ中国メーカーである「ハイセンス」とテレビの世界シェアで
トップ争いを演じ、日本シェアでも第4位と急成長しています。
TCLの日本での知名度が低かった理由
世界で2000年代初めころからテレビメーカーとして名を馳せたTCLですが、
日本では知名度が上がったのはごく最近のことです。
20年近く前から世界トップクラスのテレビメーカーだったのに、
日本では数年前までほとんど知られていなかったのはなぜなのでしょうか?
TCLの日本での知名度が低い理由の1つとして考えられるのが、
「日本に進出したのが遅かったこと」です。
TCLが最初に販路を広げたのは東南アジア、西アジア、ヨーロッパです。
2004年にフランスのトムソンと合弁会社を作り、2005年にオランダの電機メーカー・
フィリップスの株式を取得すると2006年に世界進出を開始します。
この時に現地法人を置いたのが、ベトナム・インド・ドイツなど10か国でした。
インドは言うまでもなく世界一人口が多い国で、大きく成長している最中でも
ありますから、今後テレビ需要が大きく増える可能性が高いです。
ベトナムは世界から「中国の次」と考えられており、
生産拠点を中国からベトナムに移す電機メーカーも出てきています。
中国の次に「世界の工場」となりうるベトナム市場を
いち早く抑えたといったところでしょうか。
ドイツは日本と並ぶ世界トップクラスの家電大国で、ミーレ・ケルヒャー・ブラウン
などの世界的に有名なメーカーをたくさん輩出しています。
ドイツのメーカーが世界で初めて開発した家電も少なからずあり、
電化製品の製造に関してはかなり高い技術を持っています。
高い技術を吸収する目的とヨーロッパ市場の足掛かりとするために、
ドイツに進出したと考えられるのです。
ドイツから遅れること7年、2013年にようやくアメリカに進出、2014年に
メキシコにある三洋電機のテレビ工場を買収したことで日本に進出します。
TCL自体は40年以上の歴史を持っていて、テレビメーカーとしても30年以上の
経歴がありますが、日本に進出したのはほんの10年ほど前なのです。
2014年頃は日本の大手メーカーもまだまだテレビを作っていましたから、
中国の後発メーカーが入るスキが日本市場にはあまりありませんでした。
ブランドが一定の知名度を得るまでに1~2年はかかりますし、そこからさらに
知名度を上げて売り上げを伸ばすには数年単位の時間がかかります。
TCLが日本に進出してから約10年で
、ここまで知名度を上げて売り上げを伸ばしているのは順調そのものと言えます。
ネット通販中心
TCLの日本での知名度が低かった理由としてもう1つ挙げられるのが
「販路」の問題です。
2014年時点でも中国や欧米ではネット通販が一般的にかなり浸透しており、
テレビなどの大型家電もネット通販で購入することが少なくありませんでした。
そのためTCLは日本に進出した当初は、家電量販店などの店舗ではなく
大手通販サイトAmazonでのネット販売に特化します。
ところが、日本でもネット通販が浸透してはいたものの日用品や小型家電ぐらいで、
大型家電をネット通販で購入するケースはまだまだ少なかったです。
ネット通販で大型家電を購入するにしても、
まずは家電量販店などで性能などをチェックしていました。
現在でも家電量販店などの店舗で大型家電を購入する人は多いですし、
店舗に並んでいないと検討してもらえないのが日本市場なのです。
TCLはネット通販に特化したため家電量販店などの店舗には製品が並んでおらず、
結果的に売り上げも知名度も上がらなかったというわけです。
2019年から家電量販店などの店舗にもTCLの製品が並ぶようになって、
ようやくTCLの知名度が上がってきます。
加えて有名スポーツ選手を起用したTVCMも制作したこともあり、
この数年で一気に日本でのTCLの知名度が爆上がりしたのです。
TCLの家電は評判が良くない?
SNSやネット掲示板などでTCL製品のレビューを見ていると、
良くない評判も少なからず見られます。
TCLのテレビのレビューを見ていると、
「壊れやすい」という意見がかなり多くありました。
例えば
・半年ほどでスピーカーに不具合が発生して音割れする
・購入から1年ちょっとで画面が映らなくなった
・音声と映像にズレが生じるようになった
・Wi-Fiに繋がらなくなった
などといった意見です。
TCLは世界で1位2位を争うテレビメーカーであり、
世界中でテレビを販売しています。
本当にTCLのテレビが壊れやすいのであれば、
世界トップクラスのメーカーになれるはずがありません。
TCLは日本市場でも10%を超えるシェアを持っており、
かなりの台数のテレビが日本で販売されていると考えられます。
TCLに限らず日本のメーカーでも、
販売された製品には一定の割合でいわゆる「不良品」が混ざっています。
不良品の割合がごくわずかであっても、TCLのテレビはかなり台数が
販売されているので不良品の数も必然的に多くなるのです。
不良品の数が多くなると否定的なレビューも多くなりますから、
いかにも「TCLのテレビは壊れやすい」というイメージが付いてしまうわけです。
ネガティブな意見は投稿されやすい
TCLのテレビが壊れやすいという意見がネット上で多く見られるのは、
「ネガティブな意見が投稿されやすいから」です。
例えば「美味しい」とネットなどで噂になっている飲食店で食事をしたとして、
感想をSNSやネット掲示板に書き込むのはどういった場合でしょうか?
私がSNSに書き込むとすれば、「想像していた以上に美味しかった場合」か
「噂とは違ってまったく美味しくなかった場合」のいずれかです。
ネットなどの噂を見聞きして想像していた通りの美味しさであれば、
わざわざSNSに感想を書いて評判を広めようとは思いません。
テレビの性能が想像以上に良いことはほとんどありませんから、必然的に
TCLのテレビについてはネガティブな意見が書き込まれやすいことになります。
ネットでTCLのテレビを調べるとネガティブな意見ばかりなので、実際に
使ってなくても「TCLのテレビは壊れやすい」というイメージを持ってしまうわけです。
中国製だから壊れやすい?
TCLは中国メーカーで、テレビは当然中国で作っています。
日本には「中国製品=粗悪品」のイメージが強く残っているため、
中国で作っているTCLのテレビは壊れやすいと思われているのです。
確かにかつての中国製品は「安かろう悪かろう」でしたが、
現在は特に電化製品や電子機器に関してはまったく違います。
今や中国は「世界の工場」で、
世界中の電機メーカーが中国で製品を生産しています。
もっと言うと、日本の大手メーカーも中国でテレビなどの製品を作っているのです。
中国で作られたテレビが壊れやすいのであれば、
日本で販売されているテレビはメーカー問わず壊れやすいことになります。
しかし実際には、日本メーカーのテレビが壊れやすいという話はあまり聞きません。
中国で作っている日本メーカーのテレビが壊れやすくないのであれば、
TCLのテレビも壊れやすくないはずですよね。
安いから壊れやすい?
TCLのテレビは、日本の大手メーカーのテレビに比べるとかなり価格が安いです。
例えば、TCLの65V型4K液晶テレビの価格は約8万円ですが、
パナソニックの65V型4K有機ELテレビの価格は約40万円となっています。
液晶と有機ELなど多少性能面の違いはありますが、
これだけの価格差があると「TCLのテレビはちょっと怪しい」と思ってしまいます。
やはり「安かろう悪かろう」で壊れやすい、と思っても仕方ありません。
TCLがこれだけテレビを安く販売できるのは、
粗悪品だからではなく「自社製造」だからです。
研究開発から製造、最終チェックまでTCLはすべて自社で行っているので、
製造コストが抑えられて低価格で販売できるわけです。
パナソニックは中国などの業者に製造委託しているため、中間マージンなどに
よって性能は大きく変わらないのに価格が5倍になってしまいます。
(パナソニックのブランド料もある)
TCLのテレビが安いのは自社製造でコストを抑えているからで、
粗悪品で壊れやすいからではありません。
日本のテレビ放送と相性が良くない可能性はある
TCLのテレビが、
日本のテレビ放送と相性が良くないということはあるかもしれません。
相性が良くないために、映像が受信しにくくなったり、
音声と映像がズレたりといったことが起こるということです。
日本メーカーのテレビは日本仕様で作られているので、
日本のテレビ放送と相性が良くないことはありません。
しかしTCLのテレビは、
海外仕様のものに少し手を加えて日本仕様にして販売しています。
ベースが海外仕様のため日本のテレビ放送と相性が良くなくて、
映像が受信しにくいなどの不具合が起こるというわけです。
ただ日本で販売されているTCLのテレビすべてで不具合が起こっているわけでは
ないので、不具合はやはり個体差の問題だと思われます。
まとめ
TCLは中国の電機メーカーで、
テレビに関しては世界でも1位2位を争うほどのトップメーカーです。
日本では中国メーカーの製品が敬遠されがちですが、
TCL製品に関しては日本でも世界でもかなりの数が販売されています。
この数年の間では大きな問題は報告されていませんし、
価格も日本の大手メーカーに比べるとかなり安いのでおすすめです。