日本では「Vestel(ベステル)」の家電を見かけることはほとんどありませんが、
ヨーロッパや中国では人気の家電ブランドです。
では、日本ではほぼ知名度ゼロなのにヨーロッパや中国で人気のあるVestelは、
どこの国のメーカーなのでしょうか?
Vestelはどこの国のメーカー?
「Vestel(ベステル)」は、1984年にトルコのマニサという都市で創業、
現在もトルコに本社を置く家電メーカーです。
日本ではほとんど知名度がありませんが、
トルコでは「家電の巨人」と言われるほどの大手家電メーカーなのです。
家電だけでなく、スマホなどのモバイル機器から防衛産業まで手掛ける
一大グループを形成しています。
家電の主力製品は「テレビ」で、トルコでは「5台に4台がVestel」と言われ、
ヨーロッパでは25%のシェアを獲得しているほどです。
なぜVestelは日本で知名度が無いのか?
トルコでは家電の巨人と言われ、ヨーロッパでテレビシェア25%獲得、中国でも
人気が高まっているのに、なぜVestelは日本で知名度が無いのでしょうか?
Vestelの日本での知名度が極端に低い理由の1つは、
「日本との貿易取引が少ないから」です。
外務省の資料によると、2021年のトルコの輸出額に占める日本の割合は0.2%。
輸入額に占める日本の割合も1.6%程度しかありません。
(https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/turkey/data.html#section4)
トルコから日本への輸出が少ない上に、日本へ輸出しているのは
・魚介類
・繊維製品
・ニット製品
などがメインで電化製品はほとんど輸入されていません。
(https://www.jbic.go.jp/ja/information/investment/image/inv_Turkey05.pdf)
トルコでは家電産業も盛んではあるものの、日本に対しては
ほとんど輸出していないので日本でのVestelの知名度がほとんど無いわけです。
もう1つの理由としては、
「OEM・ODMメーカーだったから」ということも挙げられます。
「OEM」は委託側が設計・開発した製品を委託側の図面に従って製造、
「ODM」は開発から製造まですべて受託側が担当します。
例えば日本のA社が開発した製品をA社の図面に従ってVestelが作り、
A社のブランド名で販売するのOEMです。
日本のA社から委託されてVestelが製品を開発・製造、
それをA社のブランド名で販売するのがODMとなります。
実際はVestelが作っているのに、店頭に並ぶ時には委託側のブランド名に
なっているので、我々がVestel製品だと気付いていないということです。
Vestelと日本メーカーの関係
Vestelは日本メーカーからも製造委託を受けており、
日本人なら誰もが知っている大手メーカーの製品も手掛けています。
例えば「日立」は、現在はVestelとは別の大手家電メーカーと合弁会社を作って
海外向けの製品をトルコで生産しています。
過去には、日立はVestelにテレビの製造を委託していましたし、
現在はテレビ事業から撤退した東芝もVestelにテレビを作ってもらっていました。
製造委託ではありません、シャープも2014年にヨーロッパでの白物家電の
販売事業をVestelに移管しています。
(https://corporate.jp.sharp/ir/pdf/2014/140926-2.pdf)
すべてヨーロッパ向けで、日本にVestelが作った日本メーカーブランドの家電は
ほとんど入ってきていません。
しかし東芝や日立の製品だと思って使っていたものが、
実はVestel製だったということがひょっとしたらあるかもしれないですね。
家電業界の栄枯盛衰
日本では家電は日本メーカーが主流ですが、
世界市場では日本メーカーの家電は主流ではありません。
日本人にとって悲しい話ではあるものの、
家電業界の栄枯盛衰の流れなので仕方ないのです。
家電が一般的に使われるようになって、
最初に家電の世界市場で覇権を握ったのはドイツメーカーでした。
高度経済成長期からバブル期にかけて日本が家電の世界市場で台頭し、
その性能の高さからドイツメーカーを追い落として日本メーカーが覇権を握ります。
しばらく日本メーカーが家電の世界市場でトップに君臨したものの、
バブル崩壊後の日本経済の縮小によって日本メーカーも勢いを失います。
家電の世界市場で日本メーカーをトップから追い落としたのは、
Samsungなどを始めとした韓国メーカーでした。
バブル崩壊後に日本の大手メーカーからリストラされた技術者を
大量に引き受けることで、韓国メーカーは大きな技術発展を遂げます。
元々韓国メーカーが持っていた技術に日本人技術者のノウハウが加わることで、
日本メーカーを凌ぐ高品質家電を生み出したのです。
日本メーカーをトップから追い落とした韓国メーカーに迫る勢いなのが、
中国とトルコのメーカーです。
韓国メーカーにもかつての日の出の勢いはありませんから、
中国やトルコのメーカーが家電の世界市場で覇権を握る日も近いかもしれません。
トップではなくなったとは言え、
日本メーカーもまだまだ世界市場で競争力を保っています。
しかしバブル崩壊後のリストラで技術者が海外に流出したことで技術発展の
スピードが鈍っており、トップを取り返す力強さは日本メーカーにはありません。
かつて日本や韓国のメーカーにドイツメーカーが駆逐されました。
日本メーカーも同じように、中国やトルコのメーカーに家電の世界市場から
駆逐されてしまうかもしれませんね。
日本人にとっては何とも寂しい話ですが、
栄枯盛衰、時代の流れを考えると仕方のないことです。
Vestelはどんな家電を作っている?
日本では見かけることはほとんど無いので、
Vestelがどんな家電を作っているのか調べてみました。
主力製品はテレビで、公式サイトによるとネット接続ができてHDD内蔵で
録画機能が付いている4Kスマートテレビとなっています。
価格は43インチで299ユーロ、日本円だと約5万円ぐらいですから、
日本の大手メーカーの4Kスマートテレビと比べると安いです。
テレビ以外だとキッチン家電が多く、
・食洗器
・オーブン
・冷蔵庫
・トースター
なども作っています。
洗濯機や乾燥機といった生活家電も作っていますし、
スマホなどモバイル機器も作っているので、総合家電メーカーといった感じですね。
テレビは日本メーカーより安いですが、冷蔵庫は330Lで約11万円となっており、
こちらは日本メーカーの製品と価格差はそれほどありません。
色やデザインが奇抜
テレビや洗濯機はオーソドックスなのですが、
食洗器や冷蔵庫は色やデザインがかなり奇抜です。
最近は日本でも家電のカラーバリエーションが増えているものの、
白やシルバー、せいぜい黒ぐらいといったところでしょうか。
Vestelの食洗器や冷蔵庫には、
白や黒に加えて赤、青、黄色といったカラーバリエーションがあります。
またトルコのデザイナー「Asli Filinta」とコラボした冷蔵庫やトースターは、
オリエンタルな雰囲気を感じさせるデザインとなっています。
40代半ばである私が子供の頃には、
花柄のデザインが施された炊飯器やトースターがありました。
最近は何かしらのデザインが施されたキッチン家電を日本で見かけることが
ほとんど無いので、Vestel製品は奇抜であり新鮮でもあります。
Vestel製品は丈夫で長く使える可能性大
確かな情報があるわけではないですが、
Vestelの家電は丈夫で長く使える可能性が高いです。
Vestelが主戦場としているのヨーロッパ市場で、
ヨーロッパでは日本以上にモノを長く使う文化が定着しています。
家電も修理しながら長く使うケースが多く、
買い替えの頻度も日本より少ないとのことです。
Vestelの家電がすぐに故障するようでは、
長く使えるモノが好まれるヨーロッパで人気が出るはずがありません。
なので、Vestelの家電は丈夫で長く使える可能性が高いというわけです。
トルコってどんな国?
Vestelはトルコの家電メーカーですが、トルコは知っていてもどんな国かまでは
詳しくわからなかったので調べてみました。
トルコはヨーロッパの西端、アジアの東端に位置する国で、
地域区分としては「ヨーロッパの国」となります。
北大西洋条約機構(NATO)に加盟しており、EUにも加盟申請しています。
身近なところでサッカーのトルコ代表はEUROやワールドカップのヨーロッパ予選に
参加しているので、アジアではなくヨーロッパの国です。
ただトルコ国民の大半がイスラム教を信仰しているので、
文化的にはアジアというよりもアラブ諸国に近いです。
ロシアと繋がりがあってアラブ諸国にも顔が効きますから、
ウクライナや中東の紛争では重要な役割を果たしています。
ヨーロッパとアジア・アラブの文化が融合しており、
ヨーロッパでもアジアでもアラブでもない独特な文化となっているのです。
例えば、イスラム教は基本的に飲酒禁止で、
イスラム教の信者が多い国ではお酒の販売が制限されています。
(外国人観光客向けに販売されるだけ)
ところがトルコでは、イスラム教信者が大半を占めるにも関わらず
飲酒は禁止されておらず、ワインやビールをトルコ国内で生産しています。
イスラム教を信仰していて文化的にはアラブ寄りではあるものの、
飲酒が自由だったりなど気質的にはヨーロッパといった感じで独特ですね。
ちなみに、独特な文化から生み出されたトルコ料理は、
中国料理・フランス料理とともに世界三大料理の1つに数えられています。
(諸説あり)
トルコは大の親日国
国家同士の関係はそれほど親密ではありませんが、
トルコ国民には親日派が多く大の親日国と言えます。
トルコ国民が親日派である理由は「エルトゥールル号の遭難」にあるのです。
1887年に日本の小松宮親王がヨーロッパ訪問をした際に、
当時のオスマン帝国のイスタンブールに立ち寄ります。
そのお礼として1890年に、オスマン帝国の君主であったアブデュルハミト2世の
特使がエルトゥールル号に乗船して訪日しました。
特使は明治天皇に謁見した後に帰国の途につきますが、
エルトゥールル号が和歌山県沖で台風に遭遇して沈没してしまいます。
特使を含む500人以上が亡くなったものの、
地元住民によって69人が救出されました。
さらに明治天皇の命で、
救出された69人の治療のために医師や看護師が派遣されます。
日本全国から多額の義援金や弔慰金が集まり、
救出された69人は日本海軍の船でオスマン帝国まで送り届けられました。
このエルトゥールル号が遭難した顛末がトルコ国内で大きく報道されたことで、
トルコ国民に親日感情が生まれたとされています。
その後の2度の世界大戦で敵対国(直接戦闘はしていない)となったにも関わらず、
現在でもトルコ人の多くが日本に対して友好的となっているのです。
私は40数年生きてきましたが、
これまでトルコに対して良い感情も悪い感情も特に持っていませんでした。
しかし好意を持たれてイヤな気はしませんから、
個人的な付き合いはありませんがトルコが近しい国であるように感じます。
まとめ
Vestel(ベステル)はトルコで最大級の総合家電メーカーで、
ヨーロッパ市場を主戦場としています。
日本ではほとんど販売されておらず、
通販サイトでもVestel製品を手に入れるのは難しいです。
ただ日本メーカーのOEMやODMを行っており、
日本メーカーの製品だけど作っているのはVestelという家電があります。
現状ではヨーロッパ向けの製品ですが、その内日本にも輸入されて
Vestel製品を日本で使うことになるかもしれないですね。