ビジネスパーソンにとって束の間の癒しの時間である「昼休み」に、
仕事の電話がかかってくることがあります。
休憩や休みの時にかかってくる仕事の電話ほど「うざい」ものはありませんが、
昼休み中の電話は取らないといけないのでしょうか?
昼休みは電話に出なくてもOK?
ルール的に言うと、昼休みにかかってくる電話には出なくても構いません。
昼休みは労基法上の「休憩時間」に当たり、
休憩時間には業務に関わらなくて良いことが保障されています。
(https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoujouken02/jikan.html#:~:text=%E5%BE%93%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%80%81%E6%98%BC%E5%BD%93%E7%95%AA%E3%81%A7%E6%98%BC%E4%BC%91%E3%81%BF,%E3%81%AA%E3%82%89%E3%81%AA%E3%81%84%E3%80%81%E3%81%A8%E5%AE%9A%E3%82%81%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82)
プライベートな電話ならともかく仕事の電話に出ることは業務に当たりますから、
昼休みにかかってくる仕事の電話には出なくても良いのです。
「昼休みでも電話に出ろ」と強制するのは労基法違反となりますし、
昼休みにかかってくる電話に出ないからと言って不利益を被ることはありません。
仕事の電話に出ると業務時間になる
業務中であろうが昼休みであろうが休日であろうが、
仕事の電話に出た時点でそれは「業務時間」となります。
業務時間になるということは当然手当てが発生します。
業務中に業務を行うのは当然ですが、昼休みや休日に仕事の電話に出る
すなわち業務を行うと手当てを貰わないといけないのです。
もし上司や先輩から「休憩時間でも電話に出ろ」と言われた場合、
仕事の電話に取られた時間分の手当てを請求できます。
まあ法律上は手当てを請求できると言っても、実際に上司や先輩に
「電話にかかった時間分の手当てをください」とは言えないですよね・・・。
手当てが貰えない場合は別で休憩時間が貰える
昼休み中に仕事の電話に出たのに手当てが貰えない場合は、
別途休憩時間が貰えます。
労基法では、労働時間が6時間以上8時間以下の場合は最低45分、
8時間を超える場合は最低1時間の休憩が必要となっています。
仕事の電話に出ることで休憩時間が労基法で保障されている時間より
短くなった場合は、別途休憩時間を設けてもらうことができるのです。
別途休憩時間が設けられると言うことは、仕事の電話によって潰れた昼休みは
業務時間に含まれて手当てが発生することになります。
昼休みの電話はむしろ上司が出ないといけない?
昼休みにかかってくる仕事の電話に出るべきなのは、
部下ではなくむしろ上司の方です。
部下は労働者であり、
労基法によって休憩時間には業務から離れることが保障されています。
ところが上司は部下の「管理監督者」に当たり、
労基法では管理監督者は休憩時間の規定が適用されないことになっています。
要するに管理監督者が昼休みに仕事の電話に出ても、別途手当てが
発生することも別途休憩時間を設けることもしなくて良いということです。
部下に別途手当てや休憩時間を与えたくないなら、
むしろ管理監督者である上司が積極的に電話に出れば良いのです。
ただし管理監督者は
・採用
・解雇
・人事考課
・部下の時間管理
に責任と権限を有する者で、
それが無い者は一般管理職で労基法の休憩時間の規定が適用されます。
昼休みに仕事の電話に出ないことが正解でないケースも
労基法で規定されているからと言って、昼休みに電話に出ないことも
電話に出ることで別途手当てや休憩時間を請求することも難しいです。
また昼休みに電話に出ないことが正解とならないケースも
実際のビジネスの場ではあります。
例えば、
取引先が急を要する要件でやむにやまれず昼休みに電話をかけてきたとします。
緊急だろうが何だろうが取引先からの電話に出ることは業務ですから、
昼休みに出る必要はありません。
ところが休憩時間であることを理由に電話に出ないことで事態が悪化して、
取引先との関係が解消されてしまいました。
労基法を盾にして昼休みに電話に出なかったのは良いですが、
それによって取引先との関係が解消されてしまっては意味がありません。
会社にとって大きな損失ですし、
それが人事考課として自分に跳ね返ってくることも十分に考えられます。
メールやLINEなど連絡手段が増えた現在、
わざわざ電話をかけてくるということは緊急である可能性が高いとも言えます。
緊急だから電話をかけてきている可能性が高いことを考えると、
昼休みに仕事の電話に出ないなんてことはできないですよね・・・。
昼休みに電話に出ないと怒られるのはなぜ?
労基法で業務から離れることが保障されているにも関わらず、実際には
昼休みに電話に出ないと上司や先輩から怒られるのはなぜなのでしょうか?
絶対的に考えられる理由として「会社や上司・先輩の考え方が古いから」
ということが挙げられます。
我々アラフォー世代が子供の頃に、「24時間戦えますか?」という
栄養ドリンクのキャッチフレーズが流行っていました。
このキャッチフレーズよろしく、「いつ何時でも仕事をするのがビジネスパーソン」
といった考え方を持っている人がいまだに居るのです。
また上司や先輩が若い頃には「ブラック企業」などという言葉もなく、
休憩を惜しんで働くのが普通でもありました。
こうした考え方の古い会社や上司・先輩に当たると、
昼休みにかかってきた電話に出ないと怒られてしまうわけです。
労基法を盾に主張しても、こうした考え方の古い会社や上司・先輩は
取り合ってくれないのでタチが悪いです。
雇用契約に休憩時間が含まれていない
昼休みに電話に出ないと怒られる理由としてもう1つ、
「雇用契約に休憩時間が含まれていないこと」が考えられます。
「労基法で規定されている休憩時間を契約に含まないなんてありえない」
と思うかもしれません。
しかし労基法で休憩時間が規定されているのは、
1日の労働時間が6時間以上の場合です。
1日の労働時間が6時間未満の労働者に対しては、
雇う側が休憩時間を設けなくても労基法違反にはなりません。
いわゆる正社員として雇用されている場合、
1日の労働時間が6時間未満ということは一般的に考えにくいです。
しかし契約社員や派遣社員、アルバイト、パートといった立場だと、
1日の労働時間が6時間未満で契約していることも十分にありえます。
1日の労働時間が6時間未満の場合は、反対に上司や先輩に労基法を盾に
電話に出ないことを咎められても仕方ないのです。
人が居ない
特に中小企業で多いのは、
「人が居ないので休憩時間でも電話に出ざるをえない」ということです。
株価がバブル期を超えて最高値を更新した、賃金が上がったという景気の良い
ニュースを耳にしますが、中小企業にはその恩恵はまだ届いていません。
十分な人手を確保することが難しく、
ギリギリの人数で業務を回している中小企業も少なくないです。
中小企業は電話に出ないことで取引関係が解消されると存続に関わりますから、
そもそも「電話に出ない」という選択肢がありません。
ましてギリギリの人数で回しているので、
昼休みだろうが休日だろうがかかってきた仕事の電話には出るしかないのです。
休憩時間にそそくさとオフィスから出て行く上司や先輩も居ますし、
下の者としてはオフィスに残って電話番をするしかないですよね。
昼休みに電話に出たくない、どうすれば良い?
誰しも昼休みに仕事の電話には出たくないですが、
昼休みに電話に出なくて良いようにするにはどうすれば良いのでしょうか?
一番現実的で実行しやすいのは「当番制の導入」です。
曜日ごとなどで昼休みなど休憩時間に電話に出る当番を決めて、
当番以外は休憩時間に電話に出なくても良いことにするのです。
当番制にすれば、当番以外の日は休憩時間に電話に出なくても怒られませんし、
気兼ねなく休憩できます。
ただ上司や先輩が当番に入らないといったことも出てきますし、
当番に入っても「今日は変わってくれ」と頻繁に言ってくる恐れがあります。
最初の内は当番制を守っていたものの、しばらくすると有名無実化して
下の者がずっと電話番をしているといったことにもなりかねません。
社用携帯の支給
従業員全員に「社用携帯」を支給すれば、
昼休みに無用な仕事の電話に出なくて済みます。
先方も誰に繋がるか分からない代表電話にかけるよりも、
担当者に直接繋がる携帯電話にかける方が手っ取り早いはずです。
電話を取る方としても取次ぎの手間がかかりませんし、
自分と関係の無い電話に休憩時間を削られることが無くなります。
ただ当然ですが、従業員全員に社用携帯を支給するにはかなりの経費が
かかりますから、中小企業だと導入が難しいです。
また社用携帯を持っていると仕事のプライベートの区別がつきにくくなります。
休憩時間を理由に電話に出ないことが許されなくなり、
社用携帯を持つことで余計に休憩時間が削られることになりかねません。
電話代行サービスの利用
昼休みにかかってくる仕事の電話への対応して、
「電話代行サービス」を利用する方法もあります。
電話代行サービスには、
代行サービスにかかってきた電話を担当者に取り次いでもらえるものもあります。
(https://www.mot-net.com/mottel/secretary_service)
要するに、電話対応専用の窓口を設けてオペレーターを置いて、
オフィスにかかってくる電話に全て対応してもらうというわけです。
従業員が不在や休日などで電話に出られない場合には、
メールやLINEで電話があったことを伝えてもらえます。
もちろん電話代行サービスの利用には費用がかかりますが、
従業員全員に社用携帯を支給するよりも安いです。
また自分に関係の無い電話は取らずに済むようになりますから、
一般的な電話対応の指導が不要となり社員研修の手間が少し省けます。
自分が仕事の電話をかける時も時間帯には注意
自分が昼休みにかかってくる電話をうざいと感じているのと同じように、
取引先の人も昼休みに電話がかかってくることをうざいと感じています。
自分が取引先などに電話をかける側になった場合も、
時間帯には注意しなければいけません。
特に取引先が外資系企業で、担当者が外国人労働者の場合は注意が必要です。
外資系企業の外国人労働者は休憩時間に電話に出ないこともありますし、
出たとしても緊急の要件でないとかなり不機嫌な対応を取られます。
企業によって休憩時間を取る時間帯は違いますが、一般的に昼休み中である
12時から13時の間は電話をかけない方が良いでしょう。
(緊急時を除く)
また始業時間直後と終業時間直前に電話をかけるのも良くありません。
企業によっては始業時間直後には朝礼や打ち合わせを行っている場合があり、
その時間帯に電話をかけると中断させることになってしまいます。
少なくとも始業時間から30分、
できれば1時間ぐらいは電話をかけない方が良いでしょう。
終業時間まできっちり働いてから帰宅の準備を始めるケースもありますが、
終業時間と同時に帰宅という企業もないわけではありません。
終業時間直前は、
その日の作業に区切りをつけて帰宅準備に入っている時間帯となります。
その時に緊急でもない仕事の電話をかけると、
帰宅準備が遅れて残業になってしまうかもしれません。
企業によって時間に対する考え方が違いますから、
取引先などに電話をかける時は「自社の常識」を押し付けないようにしてください。
まとめ
昼休みや休日にかかってくる仕事の電話ほどうざいものはありませんが、
労基法では休憩時間には電話に出なくても良いことになっています。
ただ実際には緊急の要件もありますし、
昼休みでも休日でも電話に出ざるをえません。
当番制や代行サービスなど、可能な限り無用な電話に出なくて良いシステムが
導入できないか上司に相談してみてください。