会社勤めをしていると、昼休みに社内電話をかけてくる上司や先輩、同僚が
必ずと言って良いほど居ます。
昼休みなのに昼飯を食べることもままならないこともあるのですが、
昼休みの社内電話は出ないといけないのでしょうか?
昼休みの電話は社内・社外関係なく出なくても構わない
昼休みにかかってくる電話は、社内から・社外からに関係なく出なくても構いません。
労働者を守る法律である労働基準法には、
休憩時間は業務から離れることを保障する規定があります。
(第34条3項:https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=73022000&dataType=0&pageNo=1)
社内から・社外からに関係なくかかってきた仕事の電話に出ることは、
労働基準法では業務に当たります。
休憩時間には業務から離れることが保障されていますから、業務となる
昼休みにかかってくる仕事の電話に出るということはしなくても良いのです。
「昼休みでも電話には出るもの」と洗脳されている
「昼休みに電話に出ないのはビジネスパーソンとして非常識」と言われることが
ありますし、実際に昼休みに社内電話に出ないと怒られます。
実際にYahoo!知恵袋でも「昼休みの電話」に関する質問に対して、「マナー違反
でない」「昼休みでも電話に出るのは当たり前」という回答がほとんどです。
(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1415723719)
労働基準法に抵触するにも関わらず、「昼休みでも電話には出るもの」と考える
人が多いのは経営者や社会による「洗脳」の賜物なのではないでしょうか?
アラフォーである私が小学生の頃、
「24時間戦えますか?」という栄養ドリンクのキャッチコピーが流行語になりました。
またそれ以前の高度経済成長期には「企業戦士」という言葉があり、
会社のために寸暇を惜しんで働くのがビジネスパーソンの鑑とされました。
「24時間戦えますか?」「企業戦士」という言葉を使って、
経営者側や社会が「日本人は休まずに働くもの」と労働者を洗脳したのです。
その結果「昼休みに仕事の電話に出るなんて当たり前」という労働基準法という
労働者を守る法律を無視する労働者が出来上がってしまっています。
昼休みに仕事の電話をかけるのは日本ぐらい
社内からであれ社外からであれ、
昼休みに仕事の電話をかけるのは日本の会社ぐらいのものです。
海外では業務時間と休憩時間はしっかりと区別して、
休憩時間には仕事をしないというのが当たり前となっています。
実際に外国人が働く外資系企業に昼休みに仕事の電話をかけても、
出ないことは珍しくありません。
電話に出たとしても非常に不機嫌な態度で、
「ランチ中に電話なんかしてくるな」と言わんばかりの対応をされるのです。
いまやボーダレス、ビジネスに日本も海外も関係ない時代となっています。
グローバル化の時代に、高度経済成長期やバブル期の「休まずに働くもの」という
化石のような古い考え方は時代遅れも良いところです。
緊急の要件ならともかく休憩後、もっと言えば翌日以降でも間に合うような要件で
昼休みに電話をかけてくるのはいい加減止めてほしいですね。
そもそも昼休みの電話は業務か?
昼休みに電話をかける側は「電話なんてせいぜい数分で終わる、
こんなもの業務の内に入らない」と思っているはずです。
急な要件でたまたま電話できる時間が昼休みで、
相手もたまたま電話に出られる状況だったなら業務には当たらないかもしれません。
しかし「いつでも電話に出られるようにしておけ」と上司が指示している場合には、
たった数分の電話であっても業務になります。
もっと言えば、昼休みに電話がかかってこなかったとしても「いつでも電話に
出られるようにしておけ」と指示されている場合は業務になるのです。
過去の判例や厚労省の通達によると、
「使用者の指揮命令下に置かれた時間」はすべて業務になるとされています。
(https://www.ieyasu.co/media/duties/#:~:text=%E3%81%BE%E3%81%9A%E3%80%81%E6%B3%95%E7%9A%84%E3%81%AA%E6%84%8F%E5%91%B3,%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%AB%E7%96%91%E3%81%84%E3%81%AF%E3%81%82%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%9B%E3%82%93%E3%80%82)
「いつでも電話に出られるようにしておけ」という指示は、
昼休みでも電話の前に居るようにという上司の指揮命令に当たるのです。
また労働基準法では休憩時間は労働者が自由に使えることが保障されています。
いつでも電話に出られるようにしておかないと時間を自由に使えないので、
電話に出るよう指示している場合は昼休み中でも業務になるのです。
昼休みの電話には時間外手当が付く?
昼休みでも電話に出られるように指示されている場合は、昼休みの時間も
業務中と見なされるので時間外手当いわゆる残業代が付く可能性があります。
労働基準法では一般労働者の1日の労働時間は8時間までと定められており、
8時間を超える分には時間外手当を支給しなければならないことになっています。
いつでも電話に出られるように指示されている昼休みの時間を労働時間に
加算して、合計8時間を超える場合は残業代を付けなければいけないわけです。
また労働基準法では、労働時間6時間以上で45分以上、
8時間以上で1時間以上の休憩時間を設けることを義務付けています。
昼休みの時間が労働時間に加算されたことで、1日の合計休憩時間が規定に
満たなくなる場合は別の時間帯に休憩を振り替えてもらうことも可能です。
昼休みを加算しても労働時間が8時間を超えない場合でも、
休憩の振替が認められない場合には時間外手当を請求できます。
休憩することは労働者に認められた立派な権利であり、
それが業務で潰された場合にはそれなりの代償を払ってもらえるのです。
ただ休憩時間については労働基準法は形骸化してしまっており、
残業代や振替を要求しても認められないケースがほとんどなんですけどね・・・。
あまりにも酷い場合は社会保険労務士に相談して、
労働基準監督署に申し出ることも検討した方が良いですよ。
「昼休みでも電話に出ろ」という人が電話対応すれば良い
労働基準法で保障されている休憩時間でも「電話に出ろ」と言う人が
電話対応すれば問題は収まるのではないでしょうか。
特に役職付きの上司であれば、
労働基準法の休憩時間に関する規定が適用されない可能性もあります。
労働基準法が適用されるのは一般労働者であり、
経営者や経営者側の役員、役職付きは労働基準法の適用外です。
役職付きで経営者側と見なされるのは、採用や解雇、人事考課などに
強い権限が与えられている一般的には部長以上です。
(部長でも人事考課の権限が無いと労働基準法の対象)
労働基準法が適用されない役員や役職付きなら、1日8時間以上働いても
残業代は付きませんし、休憩時間が無くても問題ありません。
どうせ普段はふんぞり返っているだけで仕事していない(ように見える)のですから、
昼休みの電話番ぐらいしてくれても良いのではないでしょうか。
自分たちが率先して昼休みの電話番をすれば、残業代も減らせますし、
休憩時間の振替も不要です。
従業員はしっかり休憩できますし、役員や役職付きは従業員に感謝されますし、
その上残業代も減らせるんですから労使ともに損がありません。
昼休みに電話に出ることが業務にならないこともある
上司の指示で電話に出なければいけない状態にあると昼休み中でも業務と
なりますが、昼休みに電話に出ることが業務にならないこともあります。
1つは従業員が自主的に昼休みの電話に出た場合です。
別に上司から指示されたわけではなく、昼休みに持ってきた弁当を自分のデスクで
食べていて、たまたまかかってきた電話に出ただけでは業務になりません。
業務になるのは上司の指揮命令下にある場合だけで、上司の指示ではなく
自主的に昼休みの電話に対応した場合は業務にならないのです。
「じゃあウチは社員が自主的にいつでも電話に出られるようにしているだけだから
問題ないな」と思っている経営者や役員も居るでしょうが、これが問題です。
明確に指示せずに、従業員に有形無形の圧力をかけて昼休みでも
電話に出ざるをえないようにしているケースが多くなっています。
明確な指示が無ければ業務とは見なされないかもしれませんが、
従業員に無償の奉仕を押し付ける会社はロクなものじゃありませんよ!
労働基準法の休憩に関する規定が適用されない職業
労働基準法はすべての労働者を守る法律ですが、
休憩に関する規定が適用されない職業もあります。
代表的なのが
・公務員
・金融業
・商業施設などのサービス業
・農水産業
・接客業
などです。
上記の職業には、労働基準法の休憩に関する規定の「一斉に付与する」という
部分が適用されません。
労働基準法の休憩に関する規定では
1.労働時間6時間以上で45分以上、8時間以上で1時間以上の休憩時間
2.休憩時間は労働者が自由に使える
3.休憩時間は労働者に一斉に付与する
となっています。
1と2は上記の職業にも適用されますが、
3は適用されず従業員は交代で休憩時間を取ることが許されています。
実際昼休みの時間帯に役所や金融機関に行っても窓口が閉まっている
といったことはありません。
(昔はあったようですが)
上記の職業ではどの時間帯でも誰かしら業務についているので、一般的に
昼休みと言われる時間帯に電話に出ても業務とみなされないことがあるわけです。
自分が電話をする側の際も気を付けないといけない
自分が昼休みの電話をうざいと感じるのと同じで、
他の人も昼休みにかかってくる電話はうざいと感じています。
自分が電話に出る側ではなくかける側になった場合、
時間帯を気にしなければならないのです。
緊急の要件でなければ、当然一般的に昼休みと言われる時間帯(12時~13時)に
電話をかけるのは避けないといけません。
できれば顧客や取引先の昼休み時間を事前に確認する、
ということをやっておくと良いでしょう。
もう1つ電話をかけるのに適さない時間として、始業時間直後が挙げられます。
会社によっては、
始業時間と同時に朝礼や打ち合わせから始めるといったことがあります。
朝礼や打ち合わせの最中に電話をかけると先方に迷惑をかけますから、
始業時間から少なくとも30分は電話しない方が良いです。
それから終業時間直前も電話をかけるのには適していません。
一般的には、終業時間まで仕事をして、
終業時間になってから帰宅の準備を始めるという会社が多いです。
しかし中には、終業時間が近付くとその日の作業に区切りを付けて帰宅準備を
始め、終業時間になると帰宅するといった会社もあります。
自分が帰宅準備しているところに上司や先輩、同僚から社内電話が
かかってきたと想像したらどうでしょうか?良い気はしませんよね。
急を要する用事で無ければ、
終業時間直前は避けて翌日の朝に電話をかけるようにしましょう。
まとめ
社内からであれ社外からであれ、
昼休みにかかってくる仕事の電話には出る必要がありません。
と言っても実際には急を要する場合もあるので、
昼休みでもかかってきた電話を無視することは難しいです。
当番制を導入して交代で昼休みに電話番をするのが現実的な方法ですが、
これでも労働基準法に抵触する問題は解決できません。
社内電話は仕方ないとして、少なくとも社外からの電話は取次サービスなどを
利用して出なくても良いようにはしてもらいたいですね。