ここのところ「賃上げムード」が高まっているものの給料が上がった実感が
薄いのは、「社会保険料負担」が増えているからです。
現役世代の社会保険料負担は年々増え続けていますが、今の20代が
アラフォーになる2040年には社会保険料負担はどうなっているのでしょうか?
2040年の社会保険料は現在の4割増し?
20代がアラフォーになる2040年には、
社会保険料が現在の4割増しになるという意見もあります。
現在も高齢化や医療技術の発達によって高齢者が増えていますが、
2040年には高齢者が増えるのは間違いありません。
若い時は予防接種以外でお医者さんの顔を見ないことがあるものの、
年齢を重ねるに連れて病院のお世話になる機会が多くなります。
私も40歳を超える頃まではほとんど病気をしたことがなく、
予防接種以外では病院のお世話になることがありませんでした。
ところが40歳も半ばになると体調を崩すことが増え、
ついには大した病気ではないものの入院まで経験しました。
後期高齢者となった私の母も若い時には「風邪もひかない」ぐらいでしたが、
今では複数の病院に定期的に通っています。
病院に通う以外にも、65歳以上になれば年金が貰えますし、
人によっては介護サービスを利用することもあります。
要するに、病院・年金・介護などによって年齢を重ねるほどに
社会保険の給付を受けることが多くなるということです。
高齢者が増えれば社会保険の給付額も増えますから、
必然的に社会保険料負担も増えるというわけです。
社会保険料の負担増には少子化の影響も
現役世代の社会保険料負担が増えるのには、
高齢化だけでなく「少子化」の影響も少なからずあります。
高齢者が増えても現役世代も同じだけ増えれば、高齢者の割合は変わらないので
現役世代の社会保険料負担は増えても微々たるものです。
ところが少子化によって、高齢者に対する現役世代の割合が減っています。
高齢者は増えるのに現役世代は増えませんから、社会保険の負担と給付の
バランスを保つには現役世代の負担を重くしないといけないわけです。
もちろん4割増しになることが決まってはいませんが、2040年には現役世代の
社会保険料負担が4割増しになることも十分考えられるということです。
社会保険料負担が月額で2万円以上増える
4割増しと言われてもピンと来ないので、
金額にして「いくら増えるのか」を調べてみました。
総理府統計局が2021年に行った「家計調査」によると、
2人以上の勤労世帯の社会保険料の月額平均は約65,000円です。
(https://president.jp/articles/-/66139?page=3)
これが単純に1.4倍になると考えると、
2040年の社会保険料負担は月額で約91,000円となります。
具体的な金額にすると、
4割増しでは月26,000円ほど社会保険料負担が増えることになるのです。
2024年春に大企業を中心に大幅な賃上げが行われました。
中小企業も含めて2024年水準の賃上げが2040年まで続けば、
社会保険料負担が4割増しになっても家計への負担はそれほど大きくありません。
要するに、月給が5万円も10万円も上がっていれば、
社会保険料負担が月26,000円増えても問題ないということです。
ただ2024年水準の賃上げが今後続くかどうかは不透明で、もし2024年と
2040年で月給がほとんど変わらないと26,000円の負担増はかなり痛いですね。
2040年時点で仮に私が40代で結婚していたとしたら、
私のお小遣いは今よりもずっと少なくなっているに違いありません。
税金も含めると「五公五民」に?
少し前にネットニュースなどで「五公五民」というワードをよく見聞きしましたが、2040年にはリアルに五公五民となる恐れもあります。
五公五民は歴史用語で、江戸時代以前の年貢率、
今で言うところの税率が50%だったことを表しています。
5割を公(役所など)に納めて、
残り5割が民の手元に入るので五公五民というわけです。
ちなみに年貢率が4割だと四公六民、
6割だと六公四民などと表現することもあります。
現在の所得税や住民税などを合わせた税率が5割だと考えるとかなり高いですが、
江戸時代以前は当然ですが社会保険なんてものはありません。
(社会保険や年金に該当する公的サービスも無い)
現代では税金に社会保険料を加えた負担が5割に近付いているので、
現代の五公五民として少し前に話題となったのです。
2021年度の決算ベースでは税金と社会保険料の負担割合が過去最高の48.1%、
四捨五入するとまさに五公五民の状態でした。
(https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/a643e02d3d8cb02cc45f59faea85c54c618b26ba)
2023年度でも少し下がったとは言え46%超ですから、
依然として五公五民状態であることに変わりはありません。
今は四捨五入で繰り上げて五公五民ですが、
2040年には四捨五入で切り下げて五公五民となっている恐れもあります。
2023年時点で税と社会保険料の負担が46%超で、
2040年には社会保険料が4割増しになるかもしれません。
社会保険料が4割増しになれば税と社会保険料を合わせた負担は5割を超え、
四捨五入で切り下げて五公五民なるのです。
江戸時代以前でも五公五民は重税で、
四公六民とした領主が領民思いの名君と崇め奉られるぐらいでした。
2024年夏には「令和の米騒動」もありましたし、
五公五民まで復活すると日本は時代が逆行している気がしますね。
氷河期世代から下の世代は高齢者になっても医療費は3割負担?
我々氷河期世代から下の世代は、
高齢者になっても医療費の窓口負担割合が3割のままとなる恐れがあります。
現状の医療費の窓口負担は、69歳までが3割、70~74歳が2割、
75歳以上が1割です。
ちなみに、私の母親は今年の誕生日で75歳の後期高齢者となり、
病院での窓口負担が1割になりました。
75歳の誕生日を迎えてから初めて病院に行った後、
「病院で払うお金が少なくなった」と私に報告してきました。
年齢を重ねるほどに病院のお世話になる機会が多くなるので、
高齢者の側からすると医療費の窓口負担割合が減るのはありがたいです。
しかし社会保険制度全体で考えると、
高齢者の負担割合が減るということは公費負担の割合が増えるということです。
現状でもギリギリなのに、これ以上高齢者が増えて現役世代が減ると
社会保険制度自体が崩壊してしまいます。
そこで社会保険制度改革として、
高齢者の医療費の窓口負担割合を増やすことが検討されているのです。
(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240913/k10014580891000.html)
今のところは「現役世代並みに収入がある」という条件が付いていますが、
2040年には年齢に関係なく窓口負担割合は3割となることも十分考えられます。
我々氷河期世代から下の世代は今でも散々負担を押し付けられているのに、
高齢者になっても負担が軽くなることはなさそうです・・・。
AIの進化による医療費削減効果に期待
社会保険料負担が重くなる氷河期世代から下の世代が期待したいのは、
「AIの進化による医療費削減効果」です。
2024年現在は医療の現場でAIが十分活用されている状況ではありませんが、
2040年までには医療現場にAIが導入される可能性が高くなっています。
AIが導入されることで、医療器具や薬剤の管理、保険請求といった作業は
すべてAIに任せることになります。
医療器具などの管理や保険請求に割いていた人員を他に回せるので、
AIによって医療現場での人件費節約が可能です。
AI導入によって診察の精度も上がりますから、
何度も検査や診察を受ける必要がなくなります。
さらに治療計画も速やかに立てられますから、
結果的に治療期間や入院期間が短縮されます。
患者のデータはAIが管理しますし、
予約や診察のスケジュール管理もすべてAIが行うことになるのです。
また予防医療にAIを活用することも検討されており、
実現すれば病気やケガを事前に防げるので医療費の大幅削減が期待できます。
現状では医療費が増えているから、現役世代の社会保険料負担も増えています。
AIがより進化して医療現場で活用されて医療費が削減されれば、
現役世代の社会保険料負担も増やされずに済むかもしれません。
そもそも社会保険料って何?
2040年には社会保険料負担が増えるという話をしてきましたが、
そもそも「社会保険料って何のこと?」と思っている人も居るかもしれません。
社会保険料について知っているつもりでも、
実は間違って覚えていて分かってなかったということもあります。
(私のことです)
一般的に社会保険料は「健康保険料」と「年金保険料」のイメージですが、
それに「介護保険料」を加えたものが社会保険料です。
健康保険料・年金保険料・介護保険料に、
雇用保険料と労災保険料を加えて社会保険料とすることもあります。
ちなみに、労災保険料は会社側の全額負担で、
労働者側が労災保険料の一部を負担するといったことはありません。
社会保険料の料率
健康保険料の料率は都道府県や加入する保険組合によって違いますが、
一般的なビジネスパーソンの場合は10%前後です。
標準報酬月額に対して10%ですから、
簡単に言うと月給の額面の1割を健康保険料として納めていることになります。
次に年金保険料ですが、
一般的なビジネスパーソンは厚生年金と国民年金に加入しています。
両方加入していますが保険料を納めるのは厚生年金だけで、
厚生年金の料率は18.3%です。
ただし厚生年金の保険料は事業主と従業員で折半しますから、
従業員側の負担は9.15%となります。
先の健康保険料とほぼ同じで、
月給の額面の約1割を厚生年金保険料として納めています。
介護保険料も加入している保険組合によって違いますが、
協会けんぽに加入している場合は1.6%です。
雇用保険料は業種によって違っており、農林水産・清酒製造・建設以外の業種だと
1000分の15.5、パーセントで言うと1.55%です。
ただし雇用保険料も事業主と従業員で分け合って負担しており、
従業員側の負担割合は0.6%となります。
健康保険料と厚生年金保険料がともに10%前後、介護保険料が1.6%、
雇用保険料が0.6%ですから社会保険料の料率合計は約22%です。
税金と合わせることで五公五民に
社会保険料の合計料率が22%程度だと五公五民にはほど遠いですが、
税金の税率と合わせることで五公五民に近付きます。
所得税は累進課税で、年収ごとの税率は
・195万円以下 5%
・196万円超から330万円以下 10%
・330万円超から695万円以下 20%
・695万円超から900万円以下 23%
・900万円超から1800万円以下 33%
・1800万円以上 40%
となっています。
年収が一般的なビジネスパーソンの平均だとすると500万円前後だと、
所得税の税率は20%です。
これに10%程度の住民税がプラスされますから、
所得税と住民税を合わせると30%となります。
さらに社会保険料の合計料率をプラスすると52%となり、
収入の半分を税金と社会保険料で納めていることになるわけです。
今回は単純に計算すると合計の料率が50%を超えますが、
控除などがあるので実際に収める金額は収入の半分は超えていません。
税金と社会保険料が収入の半分を超えていないと言っても、
50%近くも取られると働くのが馬鹿らしくなりますね。
まとめ
2040年には社会保険料負担が現在よりも4割ほど増える可能性が高いです。
私はすでに病院通いや入院でお世話になっているので、
社会保険料負担が増えることに文句は言えません。
しかし病院のお世話になることが少ない人からすると、
社会保険料負担が増えて使えるお金が減るのは納得できないでしょうね。