氷河期世代と言われる我々40代も若い時には将来への不安がありましたが、
今の若者は我々世代以上に将来への不安を抱えているとのことです。
むしろ我々氷河期世代が若い時よりも悪くなっているのではないか、
とも言われているぐらいです。
将来に不安を抱える若者が増えている
氷河期世代同士で集まると「我々が若い頃はキツかった」
「今の若者は恵まれている」といった話になることがあります。
しかし実際には今の若者は決して恵まれておらず、
むしろ我々世代よりも将来に不安を抱えています。
2023年に内閣府が行った調査によると、「将来の経済的不安がある」と答えた
20代の若者が70%以上というデータが出ています。
(https://survey.gov-online.go.jp/r05/r05-life/gairyaku.pdf)
氷河期世代がまだ10代後半から20代前半だった1996年のデータでは、
将来の経済的不安があると答えた20代は30%程度でした。
1996年と言えばバブルが崩壊して数年後、
日本経済はどん底に近い状態だったと大学生だった私は記憶しています。
ただ当時はバブル崩壊の影響がこれほど長引くとは思われておらず、
しばらくすれば景気が回復すると楽観的に思われていた節もあります。
そのため1996年の若者は「自分たちが主力として働く頃には良くなっている」と
考えて、将来の経済的不安を感じていなかったのかもしれません。
ところがその後30年、数字的には景気が回復しているように見えますが、
生活が楽になった実感はありません。
特に2023年時点の20代の若者は、生まれてから高度経済成長期や
バブル期のような「活気溢れる日本経済」を経験していないのです。
我々氷河期世代はバブルの恩恵は直接受けていないものの、
親が受けた恩恵のおこぼれに多少はあずかっています。
今の20代の若者は自身はもちろん、
親世代も働き始めてからは景気の良い時代を経験していません。
景気が良い状況を経験していないので将来景気が良くなるイメージが描けず、
経済的不安を抱えてしまうということなのでしょう。
20代どころか中高生も将来が見通せていない
20代になるとある程度社会のことも分かってきますから、
将来への不安が芽生えてくるのも仕方ありません。
ただ、20代よりも下の中高生はまだ社会のことがそれほど分かっていないので、
将来については不安よりも希望が大きくて当たり前です。
ところが2023年現在の日本では、
中高生も将来への不安が決して小さくありません。
ソニー生命が2023年に中高生を対象に行った調査によると、
10年後の自分に対して中学生は45%、高校生は48%も不安を抱えています。
(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000282.000003638.html)
10年後の日本に対する不安はさらに大きく、
中学生は71%、高校生は68%が日本の将来を案じているのです。
2017年の同じ調査に比べると少し改善しているものの、氷河期世代が
中高生の頃の同様の調査のデータは見つからなかったので比較はできません。
我々大人から見ると希望と可能性しかない中高生がこれだけ不安を
抱えているのですから、現在の日本は健全な状態とは言えないですね。
諸外国と比べても日本の若者は将来に不安を抱えている
根拠の無い自信を持つとともに将来に言い知れぬ不安を感じるのは、
若い時には誰しも経験することです。
ただ日本の若者が抱えている将来の不安は、
若い時に誰しもが感じるものとは少し違っています。
20代ではありませんが、日本財団が2022年に
・日本
・アメリカ
・イギリス
・中国
・韓国
・インド
の17~19歳を対象にした意識調査を行いました。
自国の将来に対する質問に「良くなる」と回答した割合は、
日本が一番低くなっています。
(https://kosodate.mynavi.jp/articles/34376)
日本の17~19歳で「良くなる」と回答したのは15%程度で、
反対に「悪くなる」と回答しているのは約30%に上ります。
(残りは「変わらない」「わからない」)
日本の次に低いイギリスやアメリカでも25%前後、
中国やインドに至っては80%前後が「良くなる」と回答しているのです。
ある程度成熟した日米英はこれ以上成長する余地が少ないので、
将来が良くなることがイメージしにくいのは仕方ありません。
反対に発展途上の部分を残している中印は成長が期待できる分野も多く、
明るい将来がイメージしやすいです。
それにしても日本の若者は将来に希望を持っている割合が低すぎますね。
日本の若者が将来不安を感じているのは誰のせい?
諸外国と比べても日本の若者が将来に不安を感じているのは、
一体誰・何のせいなのでしょうか?
政治のせい
日本の若者が将来不安を感じている一番の問題は「政治」にあると思います。
日本は自由主義国家ですから、
基本的には自分の生活が豊かになるかどうかは自分の努力次第です。
しかし実際には努力だけではどうしようもないことも多く、
国や自治体の支援に頼らないといけない場面も少なくありません。
その国や自治体の支援が十分でないと感じている若者が多くなっています。
先の日本財団の調査で、「自国の若者への支援は充実してる」という質問に
「はい」と回答した日本の若者の割合は約38%です。
「高齢者への支援は充実している」という質問に「はい」と回答した割合が
約64%ですから、やはり多くの若者が支援は十分でないと感じています。
国や自治体の支援があればもっと頑張れるのに、十分な支援が受けられないので
途中で諦めてしまうといったことが多いのではないでしょうか。
日本財団の調査データでは、「若者への支援は充実している」に「はい」と答えた
割合が50%を切っているのは日本だけです。
これまで日本のために一生懸命働いてきてくれた高齢者を手厚く支援するのは
当然です。
しかしこれからの日本を支えるのは10代20代の若者ですから、
将来に不安が無いように高齢者共々若者の支援してあげてほしいと思います。
政治の問題は若者の問題でもある
日本の若者が将来不安を感じるのは政治の責任が大きいですが、
その政治の問題を引き起こしているのは当の若者たちでもあります。
若者が政治に興味を持たずに選挙に行かないから、
政治家は票に結びつかない若者への支援を充実させようと思わないのです。
政治活動は議員でなくてもできますが、
一般庶民の生活に関わるような活動は議員でないとできません。
議員になるためには選挙で当選する必要があり、当選に必要な得票を集めるには
積極的に選挙に行く世代を優遇するのは当然です。
総務省の年代別投票率によると、2021年の総選挙の投票率は
・10代 約43%
・20代 約36%
・30代 約47%
・40代 約55%
・50代 約63%
・60代 約71%
・70代以上 約61%
となっています。
20代が一番投票率が低く、選挙権を得たばかりの10代よりも低いです。
もし自分が選挙に立候補するとした場合、
投票率が低くて得票に繋がらない20代向けの政策をアピールするでしょうか?
若者向けの政策が無いから若者が選挙に行かないのではなく、
若者が選挙に行かないから若者向けの政策が無いのです。
国政選挙でも地方選挙でも、投票所は朝の7時から夜の8時まで開いており、
期日前投票もしやすくなっています。
遊びに行く前でも遊んで帰ってきてからでも投票に行けるわけですから、
「忙しい」は言い訳になりません。
かく言う私も20歳になって選挙権を得たばかりの頃には、
投票にあまり行っていませんでした。
(当時選挙権は20歳から)
ただ当時から年金の問題が取り沙汰されており、父親に「将来の年金が不安なら
選挙に行け」と言われて選挙に行くようになりました。
今では、入院で投票日に投票できない時は期日前投票にも行きましたし、
国政選挙も地方選挙も毎回投票に行っています。
誰に投票すれば分からない時は白票でも良いので、とにかく選挙に行くところから
始めないと若者向けの政策はいつまで経っても出てきませんよ。
経済のせい
日本の若者が将来不安を感じる要因は「経済」にもあります。
自分の生活にも直接関わってくることなので、
政治の問題よりも経済の問題の方が深刻かもしれません。
経済と言っても大局的な視点のマクロ経済ではなく、もっと身近なミクロ経済です。
お金がすべてではありませんが、
何不自由なく豊かに生活するためにはお金が必要です。
「働いたら働いた分」とは言わないまでも、
それなりの所得があれば将来への不安はそれほど大きくなりません。
現在の日本では、
我々氷河期世代もそうですが「それなりの所得」すら無い状況となっています。
厚生労働省の「国民生活基礎調査」のデータによると、2000年を1とした場合の
名目所得は2023年時点ではわずかですが上がっています。
(https://president.jp/articles/-/85199?page=2#goog_rewarded)
ところが名目可処分所得は約10%、
実質可処分所得は15%以上も2000年と比べて下がっているのです。
要するに、所得が増えた分よりも税金や社会保険料などの徴収分が増えた方が
大きいので、使えるお金が減っているということです。
給料明細の「支給額」は増えているのに「手取り額」は減っている状況ですから、
これで将来に希望を持てという方が無理でしょう。
これは政治の問題でもありますが、それ以上に経済界、
もっと言えば大企業の問題です。
大企業はバブル崩壊、リーマンショックによる不景気、さらに2020年からの
外出すらままならない経済活動が停滞した時期を切り抜けました。
それはひとえに、従業員の給料や下請けへの報酬を上げずに内部留保を
増やし続けたおかげです。
2020年からの経済活動が停滞した時期に、社員を大量に解雇せずとも
倒産を免れたのは内部留保があったからと言えます。
(下請けはかなり影響を受けましたが・・・)
なので内部留保が悪いわけではありませんが、
企業を支えているのはお金ではなく人です。
「代わりはいくらでも居る」という態度で従業員を安い給料で働かせ続けた結果、
優秀な人材が海外に流出して人手不足を招いています。
優秀な人材を繋ぎ止めて若者が将来に希望を持てるように、
大企業はもう少し賃上げを頑張ってほしいですね。
若者のついでに我々氷河期世代の給料も上げてもらえると助かります。
若者の将来不安が少子化につながっている
日本で少子化が問題となって久しく様々な対策も行われていますが、
若者の将来不安も少子化の大きな要因の1つです。
1996年から2023年にかけて、将来に不安を感じている若者の割合は
増えていますが、25~29歳の初婚率は下がり続けています。
私が大学生だった1996年は、将来の経済的不安を感じている20代の若者の
割合が約30%で25~29歳の初婚率は70%近くありました。
その後将来の経済的不安を感じる割合は右肩上がり、
25~29歳の初婚率は右肩下がりとなります。
2020年代に入ると将来の経済的不安を感じる割合が25~29歳の初婚率の差が
大きくなる、いわゆる「ワニの口現象」となっているのです。
将来の経済的不安があるから結婚に踏み切れず、
結婚しないから子供も作れずに少子化が進んでいるというわけです。
国や自治体が行っている少子化対策は、
現役の子育て世代や子育てを終えた世代の意見を参考に作られています。
しかし既に子供を作っている人の意見よりも、これから子供を作る世代の意見を
取り入れた少子化対策の方が効果的なのではないでしょうか。
まとめ
20代の若者が将来不安を感じている割合が、
1996年から2023年の間に大幅に増えていることがデータで示されています。
我々氷河期世代も若い時には辛い思いをしましたが、ひょっとすると精神的には
今の若者の方が氷河期世代よりも追い込まれているかもしれません。
高齢者や我々氷河期世代の支援も重要ですが、
将来に希望が持てなくなっている若者への国や自治体の支援も期待したいです。
支援を期待するのであれば、
まずは20代の若者が政治に興味を持って選挙に行くことも重要ですよ。