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属人化は不要?わざと進めるのは悪いこと?

どこの会社にも「この仕事はこの人にしかできない」ということがありますが、
このような業務の属人化は一般的には悪いことと捉えられています。

専門的な知識やスキルを要する業務なら属人化するのも仕方ないような気がしますが、
業務の属人化はなぜ悪いことなのでしょうか?

業務の属人化は悪いこと?

業務の属人化が一般的に悪いことと捉えられる理由として、
「業務の効率低下」を招くことが挙げられます。

特定の業務が属人化されていると、
その特定の業務が忙しくなった場合でも他の人に手伝ってもらうことが難しいです。

反対に属人化されている業務がそれほど忙しくない時でも、
属人化された業務に従事している人は他の業務を手伝うことが難しくなります。

ある程度規模が大きくて従業員の数も多い企業ならあまり問題ないかもしれませんが、
小規模事業者だと属人化によって業務効率が大幅に低下してしまう恐れがあるのです。

業務の質の低下

特定の業務を属人化すると、属人化された業務の質が低下する恐れもあります。

例えば製造業で特定の製造工程が属人化されていると、その製造工程に
従事している人が休んだ時に同じ品質で製品が作れなくなってしまいます。

どんな人も24時間365日働き続けることはできないため、品質にバラつきが出て
製品ひいては企業全体の評判を落としてしまうことになるわけです。

業務の遅延

業務が属人化されると、
その業務を担当する従業員が休むことで業務に遅れが生じてしまいます。

期限が無いあるいは時間的に余裕のある業務ならともかく、
期限が迫っている業務では少しの遅れも致命的となります。

自社内で完結する業務はほとんどありませんから、
業務が遅れることで取引先などに迷惑をかけて信用を失うことになるのです。

1人が所定の休日以外に病欠や忌引き、家庭の事情などで遅出・早退する
といったことでも業務全体に遅れを生じさせる恐れが属人化にはあります。

業務の引継ぎが困難

業務が属人化することで、その業務の引継ぎが困難となります。

属人化された業務の担当者が定年退職あるい早期退職する、
一定以上の規模の企業であれば異動することも考えられるのです。

標準化された業務であれば退職や異動で担当者が急に居なくなったとしても、
新しい担当者への引継ぎはそれほど困りません。

しかし属人化された業務だと、担当者以外に必要な知識やスキルを持っている
従業員が居ないため、担当者が居なくなることで引継ぎが困難になるわけです。

引継ぎに時間がかかると業務効率や品質の低下、業務の遅延にも繋がりますから、
業務の属人化は企業側から見ると悪いことになるのです。

属人化業務の担当者が他社に引き抜かれたら・・・

特定の業務を属人化しているとして、
その業務の担当者がライバル他社に引き抜かれたとするとどうでしょうか。

属人化された業務に必要な知識やスキルが自社では全く引き継がれないことに
なってしまいます。

それどころか自社で蓄積したノウハウや知識、スキルが
ライバル他社にごっそり移ってしまうわけですから、そのマイナスは計り知れません。

属人化業務の担当者は休みが取りにくいため、他社に引き抜かれなくても
急に自ら退職して他社に移ってしまうことも十分に考えられます。

人材は会社にとって宝であり、その人材を失うことは大きな損失ですが、
その人材を失うことで会社が傾くようでは意味がありません。

属人化せざるをえない業務ならともかく、標準化できる業務は極力標準化して
特定の従業員に仕事が集中しないようにした方が良いのです。

業務の属人化は担当者にとっても良いことではない

業務の属人化は、その業務を担当する従業員にとっても決して良いことではありません。

「自分しかできない業務があれば、上司や会社に対して有利な立場になれる」
といった側面もあり、従業員側でわざと属人化することもあります。

しかし実際に属人化された業務を担当していると、
所定の休み以外に休みを取りにくくなってしまいます。

代わりに属人化された業務をこなせる従業員が居らず、
担当者が休むと業務が遅れる、最悪の場合は止まってしまう恐れがあるのです。

業務が遅れたり止まったりすると業績に大きく響き、結果的には自身の給料が
上がらない、出世できない、場合によっては会社が傾いてしまうかもしれません。

会社全体に大きな影響を及ぼして自分自身にとってもプラスにならないとなると、
少々体調が悪かろうが家庭の事情だろうが休めなくなってしまうわけです。

責任感の強い人だと所定の休みにも出勤することになって、
家族サービスができずに家庭内で居場所を失うことにも繋がります。

正しい評価が受けられない

属人化された業務を担当していると、
業務に対して正当な評価を受けられない恐れもあります。

自分しかその業務に従事していなければ比較対象がありませんから、
他の従業員と比べて優れているのか劣っているのか評価できません。

特別なスキルや資格を必要とする業務であればそのスキルや資格を
評価してもらえますが、そうでなければ評価のしようが無いのです。

正当な評価が受けられないと業務に見合った報酬が貰えず、
仕事に対するモチベーションが低下してしまいます。

正当な評価を受けられない業務は誰もやりたがりませんから、
正当な評価を受けられないまま業務に従事し続けなければいけません。

だからと言って会社側が必要以上に属人化された業務の担当者を評価すると、
他の従業員のモチベーションを奪うことになります。

属人化と専門化、スペシャリスト化では何が違う?

特定の業務を特定の従業員が担当することを、
属人化とは別に「専門化」や「スペシャリスト化」ということがあります。

専門化やスペシャリスト化が属人化に繋がることもありますが、
根本的に専門化やスペシャリスト化と属人化は違うものです。

専門化やスペシャリスト化は高度な技術を要する業務に対して行われるもので、
その担当者は専門家・スペシャリストと呼ばれます。

その高度な技術は簡単に引き継ぐことができませんから、
必然的に属人化してしまうわけです。

しかし属人化された業務の多くは、高度な技術を必要としているわけではなく
単に特定の従業員に業務が集中しているだけなのです。

専門化やスペシャリスト化される業務は標準化しにくい業務で、
属人化された業務は標準化できるのにしていないだけという違いがあります。

業務によっては属人化が必要なケースもある

一般的に業務の属人化は悪いこととされますが、
業務によっては属人化が必要なケースも存在します。

1つは先にも書いた「高度な技術を必要とする業務」です。

高度な技術を必要とする業務は誰でもできるように標準化することが難しく、
その技術を身に付けている人でなければ従事することが難しいです。

技術を持っていない人が担当するとかえって業務の遅延や停滞、品質の低下を
招くので、技術を持った人による属人化をせざるをえません。

従業員にとっても専門化やスペシャリスト化することで技術をより高めることができます。

高度な技術を必要とする業務を属人化することは、
会社側にとっても従業員側にとっても決して悪いことではありません。

作業の手順が定まっていない業務

作業の手順が定まっていない業務も属人化が必要です。

例えば新しい製品・サービスの開発やこれまで会社で行ったことが無い業務を
立ち上げる際などは、従業員のだれにも正しい手順が分かりません。

正しい手順が定まっていない業務を標準化すると、
かえって業務が非効率になってしまい品質の低下を招いてしまいます。

一人あるいは少人数に業務を集中させるて属人化して、
ある程度作業の手順が定まったところで標準化を進めていくことが望ましいです。

作業内容が毎回変わる業務

作業の内容が毎回のように変わる業務も属人化が望ましいものとなります。

例えばオーダーメイド製品を作るなどといったようなクリエイティブな業務は、
2回として全く同じ作業を行うことがありません。

毎回作業内容が変わる業務を担当するには、
どんな要望や状況にも対応できる柔軟性と経験・知識が求められます。

作業の手順を定められないので標準化が難しいため、作業内容が毎回変わる業務は
属人化が望ましいと言うよりも属人化せざるをえないといった方が正しいです。

属人化が望ましくない業務

属人化するのが望ましい、属人化せざるをえない業務もあれば、
反対に属人化しない方が良い業務もあります。

属人化が望ましくない業務の代表例が、
会計や人事といった経営の基本となるいわゆるバックオフィス業務です。

特に会計や経理といったお金を扱う業務を属人化すると、
脱税や横領といったことに繋がりかねません。

小規模事業者の経理担当者が横領を行っていた例は枚挙にいとまがありませんし、
テレビ局のような大企業でも経理担当者による不正が発生しています。
(https://news.yahoo.co.jp/articles/85f09e02392abbc2fa700b0ff3f01c487b22e829)

人事は属人化することで人材に偏りが発生してしまい、
適材適所が成り立たなくなる恐れがあるのです。

ワンマン経営の小規模事業者で、従業員が社長のイエスマンばかりになって
組織が硬直化してしまうといったことが多々見られます。

実際に硬直化した会社と仕事をすることなって、
なかなか業務が前に進まずに苦労したという経験をした人も多いのではないでしょうか。

営業・顧客対応

営業や顧客対応に関しても属人化せずに標準化した方が効率的です。

特定の営業マンと懇意になって、
「その人が居るからこの会社と仕事をする」といったケースが無いことはありません。

卑近な例ですが、自動車ディーラーの担当者と仲良くなり、
その担当者の異動先である遠方の店舗へ車検に行っている知り合いが私にも居ます。

「その人が居るからこの会社と仕事をする」といった顧客や取引先とは、
担当者が居なくなると付き合いが無くなってしまう恐れがあります。

顧客や取引先が担当者に付くのは会社としては好ましくありませんから、
営業や顧客対応は属人化するのではなく標準化する方が良いのです。

顧客や取引先に「この人が居るからこの会社と仕事をする」と言わしめる従業員は
どういったスキルや知識を持っているのかを共有して標準化しましょう。

まとめ

業務の属人化は悪いことと言われることが多いですが、
一概に悪いことと言えないケースもあります。

ただし標準化できる業務を属人化することは、
会社側にとっても従業員にとってもプラスにはなりません。

会社に対する立場を有利にするためにわざと属人化することも逆に自分の首を
絞めることにもなりかねないので、標準化できる業務は標準化してもらいましょう。

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