結婚しても子供を作らない選択をした夫婦いわゆる「子なし夫婦」は、
「老後が悲惨」と言われることがよくあります。
私も40代独身で子なしですから他人事ではないので、
子なし夫婦が悲惨と言われる理由について詳しく見ていきましょう。
子なし夫婦の老後は本当に悲惨?
色々と調べてみましたが、子なし夫婦の老後が悲惨と言われる
明確な要因については詳しくは分かりませんでした。
悲惨と言われる要因となるようなものはいくつかあるものの、
「コレ」という決定的なものはありません。
「子供が居ない」→「夫婦2人で寂しく生活」→「パートナーが先立つと1人になって
悲惨」といったように漠然としたイメージで悲惨と思われているようです。
子なし夫婦の老後が悲惨と発信しているのは特定の人?
子なし夫婦の老後について調べていると、
悲惨と発信しているのは特定の背景を持つ人が多いことが分かりました。
まず1つは「少子高齢社会を不安している人たち」です。
もっと具体的に言うと、
少子化対策や医療費削減をお題目に唱えている中央や地方のお役人方です。
日本は1970年代の第二次ベビーブーム以降出生率が右肩下がりで、
都道府県別だと出生率が1を切るところも出てきています。
国が想定するよりも早いペースで少子化が進んでおり、
このままだと健康保険や年金など社会保障制度が破綻する可能性が高いです。
そこで中央や地方のお役人方が、マスコミなどを通じて「子なし夫婦の老後は
悲惨ですよ~」という情報を発信しています。
老後が悲惨と若い世代の不安を煽って、
少しでも子供を作ろうというカップルを増やしたいと考えているわけです。
もう1つは「保険や投資など金融商品を売りたい人たち」です。
2019年に金融庁の金融審議会が「退職金と年金だけでは老後の生活資金が
2000万円不足する」という試算を発表しました。
(https://www.daiwa.jp/products/fund_wrap/online/column/old-age/006/)
いわゆる「老後2000万円問題」ですが、
超低金利の現状では銀行に預けていても2000万円のお金は作れません。
子供が居ると子供からの援助が期待できるものの、
子なし夫婦だと子供からの援助も期待できません。
そこで保険会社や証券会社が、子なし夫婦の老後は悲惨だから
預金を投資に回して老後の資金を作りましょうと煽っているわけです。
それから「現在進行形で子育てをしている人」も子なし夫婦の老後は悲惨と
発信している特定層の1つとなります。
私は子育てをしたことがないので分かりませんが、親や子育て経験のある
知り合いなどによると「子供を育てるのは物凄く大変」とのことです。
「大変な思いで子育てしたのだから、子育ての苦労を知らない子なし夫婦よりも
老後ぐらいは幸せでありたい」と心の奥底で思っています。
そこで「子なし夫婦は老後が悲惨」という情報を発信して、
大変な思いで子育てしている自分の心を落ち着かせているわけです。
子なし夫婦の老後が悲惨と言われる理由
一般的に「子なし夫婦の老後が悲惨」と言われるのにはいくつか理由があります。
お金の問題
子なし夫婦の老後が悲惨と言われる理由の1つ目は「お金の問題」です。
先にも少し書きましたが、老後2000万円問題で退職金や年金とは別に
2000万円ほどの蓄えが無いと老後の生活が苦しくなります。
子なし夫婦は子供からの金銭的援助が期待できないので、
老後に生活資金が足りなくなって悲惨というわけです。
また子供が居ると養育費のために節約しますが、子なし夫婦だと養育費が
不要なので子供が居る夫婦に比べて生活が派手になりやすいと言われています。
夫婦共働きで子なしなのに生活が派手で思ったほど蓄えが無く、
子供からの援助も無いので老後の生活が悲惨になるというわけです。
子供が居ても経済的援助は期待できない
子供が居ると老後に経済的援助が期待できると言われますが、
実際に子供が親に経済的援助をしているケースはそれほど多くありません。
子供が独身で経済的にかなり余裕があるなら、
親の面倒を見たり仕送りをすることもあるでしょう。
しかし結婚して子供(孫)が居る状況では、
夫婦共働きでも親に経済的援助をする余裕はありません。
また子供が生まれてから大学を卒業するまでにかかる養育費は平均で
3000~4000万円かかると言われています。
給与や生活の水準が同じなら、子供が居る夫婦よりも子なし夫婦の方が
少なくとも3000~4000万円の経済的余裕があるはずなのです。
なのでむしろ老後にお金の問題が発生する可能性が高いのは子供が居る夫婦で、
子なし夫婦の方が老後にお金の心配がないケースが多いと言えます。
介護の問題
子なし夫婦の老後が悲惨と言われるもう1つの理由が「介護の問題」です。
年齢を重ねて健康を害したり、体の自由が利かなくなっても、
子なし夫婦は介護してくれる人が居ないので悲惨というわけです。
かつて妻を介護するために辞職した市長も居ましたし、
年老いた妻が動けない夫を介護するといったケースも少なくありません。
(http://mindfulness.jp/kunou/fl-kaigo/363-kaigo2.htm)
介護してくれる子供も居らず、施設に入れるお金も無く、
介護に疲れた夫が病気の妻を・・・なんてことになると悲惨というわけです。
子供が居ても介護してくれるとは限らない
介護の問題で子なし夫婦の老後が悲惨と言うと、
子供が居る夫婦には介護の問題が無いように聞こえます。
しかし実際には、
子供が居ても親には老後の介護の問題が発生することがあるのです。
少し古いデータですが、厚生労働省の仕事と介護の両立に関する調査によると、
介護が必要な親が居る人の半数が親の介護を担っていません。
(https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/dl/h24_itakuchousa05.pdf)
要するに、子供が居る夫婦が将来介護が必要になっても、
必ずしも子供が面倒を見てくれるとは限らないということです。
仕事や親とは離れて暮らしているなど子供にも色々な事情がありますから、
親の介護をしたくてもできないということもあります。
子供に介護してもらえず、養育費のために経済的余裕が無くて施設にも入れない、
老後が悲惨なのはむしろ子供が居る夫婦の方かもしれません。
相続の問題
子なし夫婦の老後が悲惨と言われる理由としてもう1つ「相続の問題」があります。
「子供が居ないんだから夫婦の遺産は国庫に入るだけで、
相続で揉めることはない」と思っていませんか?
確かに子供の居ない夫婦が同時に揃って亡くなれば、
相続問題が起きたとしても亡くなった2人は関係がありません。
しかし夫婦が同時に揃って亡くなることはほとんどありませんから、
どちらかが先に亡くなって残った方が遺産を相続することになります。
子供が居る場合は、法定相続人は配偶者と子供だけなので、
特に一人っ子だったりするとむしろ相続で揉めることはありません。
ところが子供が居ない場合は、
亡くなった人の親や兄弟姉妹も法定相続人に含まれるケースがあります。
亡くなった人に子供が居ないと、配偶者と亡くなった人の親が相続人となり、
親が既に亡くなっている場合は兄弟姉妹が相続人となります。
もし兄弟姉妹が先に亡くなっている場合は、
兄弟姉妹の子供、亡くなった人から見た甥姪が代襲相続人となるのです。
配偶者の親兄弟とは法律上の家族で、実際には血が繋がっていない他人です。
血の繋がっている家族でもお金が絡むと揉めることがありますから、
他人となるとお金が絡むことで揉める可能性は高いと言えます。
子なし夫婦の相続問題は遺言書で解決できる
子なし夫婦の相続問題は遺言書で万事解決できますから、夫婦それぞれに
遺言書を作っておけば相続問題で老後が悲惨になることはありません。
遺産相続では、法定相続よりも故人の意思である遺言書の内容が優先されます。
(https://creas-souzoku.com/columns/souzoku/inheritance-tax/legal-inheritance-or-a-will-1/)
遺言書に「遺産は全て配偶者に相続させる」と書いておくだけで、
亡くなった人の兄弟姉妹は相続に口が出せなくなるのです。
法律では法定相続人に「遺留分」が認められていて、
遺言書の内容に関わらず最低限の相続分を請求する権利があります。
ただ法律で遺留分が認められているのは、
配偶者・直系卑属(子、孫)・直系尊属(親、祖父母)までです。
亡くなった配偶者の親が健在なら、
遺言書があっても遺留分を請求されて揉める恐れが無いとは言えません。
しかし常識的に考えて、親が子の遺産を寄こせと言ってくることは考えにくいです。
何よりよほど若くして亡くならない限りは、
亡くなった配偶者の親は既に亡くなっていることが多いです。
なので亡くなった配偶者の親と相続で揉める可能性は低いですから、
遺言書さえ書いておけば子なし夫婦の相続問題は万事解決というわけです。
住居の問題
子供が居る居ないに関わらず、老後には「住居の問題」が出てきます。
介護の問題とも関わってくるのですが、
若い時に建てた家が歳を重ねるに連れて住みにくくなってくるのです。
比較的最近建てた家であれば、
段差の少ないバリアフリーが取り入れられているので老後でも安心して住めます。
ところが数十年前に建てた家だとバリアフリーなんて考えられていませんから、
そこかしこに段差があって階段も急だったりします。
歳を重ねて筋力が弱ってくると、急な階段を上り下りするのはキツいですし、
ちょっとした段差でも躓いてケガをするリスクが高くなるのです。
家の階段や段差で躓いてケガをして動けなくなると介護の問題も出てきますから、
子なし夫婦は住居の問題も早い内から考えておく必要があります。
「老後は田舎に移住」はNG?
定年退職したら老後は田舎でのんびり暮らしたい、
と考えている人も多いかもしれません。
しかしわたしの個人的な意見ですが、
歳を重ねてから田舎に移り住むのはおすすめできないです。
ずっと田舎に住んでいるなら構いませんが、
都市部から田舎に移住するのは止めた方が良いでしょう。
都市部であれば公共交通機関がある程度充実していますし、
商業施設や病院などの数も多いです。
日常の買い物や通院は徒歩や自転車で済ませられ、
遠出するにしてもバスや電車が利用できます。
ところが田舎は公共交通機関も限られていますし、
商業施設や病院も近くにないので車がないと生活できません。
アクセルとブレーキの踏み間違いや道路の逆走など、
高齢者ドライバーの交通トラブルのニュースを毎日のように見聞きします。
車の運転は何かとリスクが伴いますから、歳を重ねてからは車が必要ない
都市部で生活するのが個人的にはおすすめです。
老後はエレベーター付き1フロアで階段の上り下りが無いマンションに
引っ越すのがベターだと個人的には考えています。
まとめ
子なし夫婦の老後は悲惨と言われるのにはいくつか理由がありますが、
どれも根拠が弱いです。
子供が居ても老後が悲惨なケースもありますから、あくまで個人の問題で、
子なし夫婦をひとまとめにして老後が悲惨とは言えません。
子供の有無に関わらず、老後を不安なく迎えるには「準備」が必要です。
若い内は老後のことを考えにくいですが、できるだけ早い内から
準備を始めておくことで夫婦2人でも不安のない楽しい老後を迎えられますよ。
・・・と高説をたれる私も十分な準備ができているわけではないので、
子なし独身でも不安がないように今から老後の準備を始めたいと思います。