この1~2年で急激に物価が上昇しており、その要因の1つとして「人手不足」によって賃金が上昇していることが挙げられます。
物価が上がるのはありがたくないですが、反面人手不足で苦しんでいる企業や業界に対しては「ざまあみろ」という気持ちがないわけではありません。
人手不足をざまあみろと思う心理とは?
人手不足が物価上昇の要因の1つにも関わらず、人手不足で苦しむ企業などに「ざまあみろ」という感情を持つ人が少なくない理由は何なのでしょうか?
1つには「政府や企業に対する不満」が理由として挙げられます。2024年・2025年と2年続けて賃上げ率は5%超となっており、我々労働者の賃金は確実に上がっています。(https://www.jil.go.jp/kokunai/blt/backnumber/2025/07/shuzai_01.html)
ところが、2020年を基準とした消費者物価指数は2025年時点で13%近くも上昇しているのです。(https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/zenkoku.pdf)物価変動を考慮した実質賃金は、2022年以降減る一方となっています。(https://www.dlri.co.jp/report/macro/534253.html)
加えて、税金や社会保険料の負担率も、この20年ほどは右肩上がりです。1988年時点では家計における税金と社会保険料の負担割合は20%前後でしたが、1997年に一気に22%前後に増えています。
そこから10年ほどは21~22%前後で推移していたものの、2007年から2015年にかけて急激な右肩上がりとなり25%を超えました。その後は伸び率が緩やかになったものの、2025年にかけて25~26%前後で推移しています。(https://www.dir.co.jp/report/research/law-research/tax/20250124_030156.pdf)
要するに、給料は増えているもののそれ以上に物価が上がって税・保険料負担が増えているので、生活が楽になるどころか苦しくなっているわけです。
税金や社会保険料の負担で国民が苦しんでいるにも関わらず、政府は歳費を削減しようとせずにさらなる負担増を考えていたりします。物価上昇で企業は儲かっているはずなのに従業員に還元せず、内部留保で貯めこんでいるといったこともあります。
こうした政府や企業に対する不満が、人手不足対策で苦しんでいる政府・企業に対する「ざまあみろ」という感情になって表れているわけです。
労働環境への不満
「労働環境」に対する不満が、人手不足の企業に対して「ざまあみろ」という感情となることもあります。
現状で人手が十分に足りている企業や業界の方が少なく、ほとんどの企業や業界が人手不足に苦しんでいます。人手不足でも事業規模を縮小するわけにはいきませんから、従業員1人当たりの労働時間や業務量は増えているのです。
今までよりも忙しくなって長い時間働いているんだから給料が上がって当たり前、むしろ忙しくなった割には給料の上がり幅が小さいと感じるぐらいです。
いくら忙しくても構わないけど働いた分だけ給料を上げろ、と不満を抱いている人も居ます。給料は今のままでも良いけど労働時間や業務量を減らせ、という不満を抱く私のような人も居ます。
「労働環境が改善されないから人手不足が解消しないんだざまあみろ」、となるわけです。
氷河期世代の恨み節
私のようなアラフィフ世代、いわゆる就職氷河期世代が人手不足で苦しむ状況に対して「ざまあみろ」と思っていたりもします。
私が就活を行っていたのが2000年で、2001年に新社会人としてのスタートを切りました。まさに就職氷河期に入った頃であり、リーマンショック時ほど酷くなかったものの、大学生の就職内定率は9割程度しかありませんでした。(2025年は9.8割超)
大学生の1割が就職したくでもできず、内定をもらった9割の多くも望んだ企業や業界に進むことができなかったのです。中には、内定が取れなかったために、留年してもう1年新卒として就活に臨むケースもあったぐらいです。
また有効求人倍率も2000年時点は0.6倍ほどしかなく、業種や職種を問わなくても働けないという状況でした。(2025年は約1.2倍)
私が就活していた頃は完全な買い手市場で就活する側の立場が圧倒的に弱かったので、圧迫面接などというくだらないことまで行われていたのです。
氷河期を潜り抜けて何とか就職できたは良いものの、当然のような低賃金で長時間労働を強いられました。コンプライアンスが重視される現在では考えられませんが、パワハラやセクハラなどあらゆるハラスメントも経験しました。
今になってようやく氷河期世代を支援する政策が打ち出されていますが、当時は全く政府や自治体による支援も無かったです。
我々氷河期世代は第二次ベビーブームの最終年代に引っかかるかどうかの年代ですが、人数としては現在の大学生世代よりも断然多いです。氷河期世代の私は、現在の人手不足も少子化も氷河期世代を放置したから深刻化したのだと思っています。
2000年当時に政府や自治体がしっかり就職支援していれば、現在のように中間管理職世代がスカスカという事態は避けられたはずです。また人数の多い氷河期世代がちゃんと就職できてそれなりの賃金を貰えていれば、結婚して子どもを産んだ人ももっと多かったに違いありません。
就職氷河期を軽視して氷河期世代を放置したツケが、現在の人手不足や少子化となって返ってきているわけです。我々にも影響がありますが、人手不足や少子化のニュースを見るたびに「ざまあみろ」という感情になるのも事実です。
SNSの普及によって顕在化
最近になって人手不足に対して「ざまあみろ」という意見が増えているように見えますが、恐らく以前からこういった意見を持っていた人は少なからず居ました。最近になって増えたように見えるのは、「SNS」が普及したことと関係があるのではないでしょうか。
私が大学生の頃にインターネットが一般的となり、就活にもインターネットを利用していました。しかしSNSのような自分の意見を広く発信できるツールはまだ存在しておらず、せいぜいネット掲示板に書き込む程度でした。
ネット掲示板の影響力は今よりもさらに小さかったので、社会や企業に対する不満の声は世間に届きにくかったのです。
Twitter(現在のX)が日本でサービスを開始したのが2008年、2009年頃から利用する芸能人が出始めて、2010年にユーザーが1000万人を突破します。
ユーザーが1000万人を突破した2010年あたりから、有名人・著名人でない一般の人が発信した情報がバズるといったことが起こり始めます。TV番組でもSNSの投稿が取り上げられるようになり、SNSの影響力が一気に大きくなりました。
人手不足は2010年代後半から顕著になりましたから、ちょうどこの数年で人手不足に対する「ざまあみろ」という意見が顕在化するようになったわけです。
人手不足がもたらす影響
我々氷河期世代は特に人手不足に対して「ざまあみろ」と思っていますが、人手不足がもたらす影響は無視できません。現状、人手不足で苦しんでいるのは国や自治体、企業ですが、いずれは我々労働者にもしわ寄せが及びます。
人手が不足することで、まずは「企業の経営」に大きなダメージが加わります。
現在の事業を回すので手一杯、新しい事業を展開する余裕がありません。定年制度があるので従業員は年々減る一方で、いずれは現在の事業を回すことも難しくなってきます。
事業を縮小したり、複数の事業を展開している場合はいくつかの事業から撤退せざるをえなくなるのです。事業の縮小や撤退によって企業の収益は下がって、新たに人を雇う余裕が無くなり、さらなる事業縮小を迫られます。
縮小させるのにも限界がありますから、いずれは倒産、あるいは外資に買収されるといったことになってしまうのです。
事業の縮小はサービス業において顕在化してきています。大手コンビニチェーンが一部店舗で24時間営業を取りやめたのが、人手不足による事業縮小の代表的です。
飲食店では従業員に対する十分な研修期間が確保できないことから、未熟なまま接客業務に駆り出されています。接客技術が未熟なことでオーダーミスや提供の遅れが発生、サービスの質が低下したことで顧客満足度が下がっているという事例もあるのです。
労働者へのしわ寄せ
企業で人手不足による影響が大きくなってくると、その企業で働く我々労働者にしわ寄せがきます。
定年退職や離職によって従業員が減っているにも関わらず、これまでと同じだけ業務を行わなければいけません。従業員1人当たりの業務量は増えますし、増えた業務をこなすには労働時間も増えます。
業務量や労働時間が増えた分だけ給料が上がれば報われますが、業務量や労働時間の増加率に比べると給料の上昇率が低いです。時給換算にするとこれまでよりも安くなりますから、長時間労働による身体的疲労だけでなく精神的な疲労も増大します。
加えて、働き方改革によって残業時間に上限が設けられています。業務量は増えているのに残業はできないとなると、必然的にサービス残業が増えてしまうのです。
身体的・精神的な疲労が増えるだけで給料が上がらないと、定年前に退職する人が増えて人手不足がさらに加速することになります。
日本経済全体への影響
人手不足は最終的に日本経済全体に大きな影響を及ぼします。人手が不足することで企業の生産性が低下すると、国内総生産(GDP)の伸び率が鈍化するのです。
GDPが伸びないと国内市場は縮小され、今以上に賃金が上がりにくくなります。社会保障制度や社会インフラ、医療サービスなどあらゆるものの維持が難しくなります。
現状でも日本は経済大国と言えなくなってきていますが、人手不足の状況が続くと世界経済の中で弱者となってしまう恐れもあるのです。
IMFの推計によると、日本の名目GDPは緩やかですが右肩上がりとなっています。2025年の名目GDPは約630兆円、1980年と比べると2倍以上、2015年と比べて約17%ほど上昇しています。
ところが、諸外国と比べると日本のGDPの伸び率は明らかに鈍いです。
世界一の経済大国であるアメリカは、1990年から2024年の30年余りの間に名目GDPは5倍以上となっています。世界2位の中国は、2007年2008年あたりから急上昇して2024年時点の名目GDPは日本の約4倍です。
人口が違うので単純には比較できませんが、アメリカ・中国と比べると日本は明らかに経済成長が鈍化しています。
現状でも、中国人や中国企業によって日本の土地や企業が「爆買い」されています。このまま人手不足が深刻化すると、いずれ日本は中国の経済的な属国となってしまう恐れもあるのです。
業務の効率化は労働者にマイナス?
人手不足の解消策の1つとして、「業務の効率化」が進められています。効率化することで少ない人数でも業務を回せるようにすると言えば聞こえが良いですが、実は労働者にとってはマイナスとなる恐れがあります。
業務が効率化されても業務の量自体は減るわけではありません。業務量は減らないので、1人当たりの労働時間は同じでも業務の量は増えることになるのです。簡単に言えば、業務が効率化されると今まで以上に忙しくなるだけということです。
効率化されることで仕事が早く終わって、早く家に帰れるといったことにはなりません。仕事が早く終わったら次の仕事をしなければならないので、早く帰れることはなくて忙しくなるだけです。
業務の効率化で忙しくなっても給料が上がれば不満も出ないでしょうが、給料は上がらず内部留保が増えるだけとなる可能性が高いです。
企業が倒産したら我々労働者の働く場所が無くなるので困ります。しかし給料が上がらず忙しくなるだけだと、人手不足に対する「ざまあみろ」という感情を持つ人は減らないですね。
まとめ
人手不足に苦しむ企業や人手不足解消に右往左往している政府のニュースを見ると、「ざまあみろ」という感情が湧いてきます。特に私のような、特に何の支援も無く就活の難易度が高かった就職氷河期世代は「ざまあみろ」という感情がより強いです。
ただ、人手不足がこのまま進行すると、いずれは我々労働者にも良くない影響が出てきます。だからと言って我々労働者ができる人手不足対策はほとんどありませんから、政府や企業の取り組みを歯がゆい思いで見守るしかありません。