今年もうだるような猛暑続きの夏でしたが、「省エネ」の金看板の下に職場のエアコンの設定温度が高くて暑いと感じることも多かったのではないでしょうか。
みんなが暑いと思っていれば温度を下げてもらうこともできますが、自分だけが暑いと思っていると温度を下げてもらうことは難しいです。
自分だけ職場が暑いと感じるのはなぜ?
周りはそれほど暑いと思っていないのに、職場で自分だけが暑いと感じるのはどうしてなのでしょうか?
自分だけが暑いと感じる原因として一般的に考えられるのが、自分が「暑がりだから」ということです。暑がりにも色々あって、筋肉量が多かったり、反対に脂肪の量が多かったり、あるいはホルモンバランスが変化していることも考えられます。
筋肉は身体を動かしていない時でも熱を発していて、筋肉量が多いほど発熱量も多くなります。
街中を歩いていると、春先や秋口などの肌寒い時期でも半袖の人を見かけることがありますよね。マッチョの人は筋肉を見せたいからというわけではなく、筋肉の発熱量が多くて暑がりだから肌寒い時期でも薄着なのです。
脂肪は建物で言うところの断熱材みたいなもので、体内で発生した熱を外に放出しない役割を果たします。そのため少し動いただけでも体内に熱が溜まって、周りが暑いと思わないような環境でも汗をかくほど暑いと感じてしまうことがあるのです。
ホルモンバランスの変化によっても体感温度が変わり、特に甲状腺ホルモンの分泌量が多くなると暑がりになるとされています。(https://www.aska-pharma.co.jp/mint/womanhealth/joseinobyoki/byoki06.html)
甲状腺ホルモンは喉の近くにある甲状腺から分泌されるホルモンで、代謝を促す働きを持っています。甲状腺ホルモンの分泌量が過剰になると代謝が活発になって体温が上昇、それほど暑くない環境でも暑いと感じたり汗をかいたりするのです。
ストレスによって甲状腺ホルモンの分泌量が増えることがあり、暑さがストレスになるとさらに甲状腺ホルモンの分泌量を増やすという悪循環になります。
バセドウ病など大きな病気との関連も疑われるので、職場で自分だけ暑がっているなら甲状腺ホルモン濃度を調べる血液検査を受けた方が良いかもしれません。
空調設備やゾーニングの問題
職場で自分だけが暑いと感じるのは自分が暑がりだからですが、暑がりだからと言って暑いのを我慢しなければいけないわけではありません。
ただ、自分だけが暑いのにエアコンの設定温度を下げてしまうと、今度は他の人が寒いと感じるようになってしまいます。暑がりの自分と暑がりでない他の人がともに快適に仕事をするためには、空調の「ゾーニング」が必要です。
普段仕事をするオフィスと必要な時しか使わない会議室で空調系統を分ける、といったぐらいのゾーニングはどこの職場でも行われているはずです。全館空調で部屋ごとのゾーニングすらできないようになっているのは、空調設備を更新しない完全に会社側の問題と言えます。
できればもう一歩進んだ、方位別や負荷特性別のゾーニングが可能な空調設備を導入してもらいたいところです。
太陽の影響を受ける東側・南側・西側と影響を受けない北側では、空調の効き方が違います。午前中から日中にかけては東側と南側、夕方は西側が少し温度が下がるように調整してくれると自分だけ暑いと感じることが減るはずです。
負荷特性別ゾーニングは、熱負荷の大きさによって温度を調整します。
例えば、外壁に近いところは太陽熱や外気温の影響を受けやすいですが、建物の中心付近は太陽熱や外気温の影響を受けにくいです。同じ温度設定でも外壁近くと建物の中心付近では空調の効き方が変わってきますから、ゾーニングによって温度を調整するのです。
方位別や負荷特性別のゾーニング機能は最新技術というわけでもないので、最新型でない空調設備にも備わっています。職場で自分だけ暑いと感じるのは、自分が暑がりなのもありますが、ゾーニング機能が備わった空調設備に更新しない会社側の問題でもあります。
空調のゾーニングは省エネにも繋がりますから、空調設備の更新を怠っている会社は省エネ意識が低いとも言えるのです。
心頭滅却すれば火もまた涼し?
我々の世代もそうですが、我々より上の50代60代にはいまだに根性論がはびこっていたりします。職場で「暑い」と口にしようものなら、「夏は暑くて当たり前」「暑いと思うから暑いんだ」などと言われることがあります。
夏が暑いのは当たり前なのですが、我々が子どもの頃よりも明らかに暑くなっているのも事実です。
我々が小学生中学生の頃は8月でも午前中は比較的涼しかったので、午前中に宿題をして午後プールに出かけるのが日課でした。現在は8月ともなると早朝から暑く、出社時間ともなるとエアコンが効いていない部屋に数分と留まれないほど暑いです。
30年40年前のように「心頭滅却すれば火もまた涼し」なんてことは、今の時代には通じません。しかし会社の管理職など責任ある立場には、根性論がはびこる50代60代が多くなっています。
空調設備の更新など職場環境を改善するよりも、「暑くないと思えば暑くない」という根性論がまかり通ってしまっているのが現状です。
ただ、根性論を宣る50代60代の管理職に限って、自分の部屋や席だけ涼しくなるようにしていたりするんですよね・・・。
社員が暑がっていることに会社が気付いていない?
職場で自分だけが暑いと感じているように思うのは、社員が暑がっていることに会社が気付いていないことも考えられます。
先のように根性論がはびこる職場では、「暑い」とか「温度を下げてほしい」と言うだけムダです。たださえ暑いのにムダな文句を言うのにエネルギーを使いたくないので、社員の誰もが「暑い」とか「温度を下げてほしい」と言わないのです。
社員が声を上げないことには、会社側は社員が職場環境に不満を持っていることに気付けません。誰かが体調でも崩さない限りは現状で快適に仕事ができていると思って、ゾーニングもできない古い空調整備をそのまま使い続けることになっているわけです。
要するに、言うだけムダだと思い込んで「暑い」と言わない社員側にも問題があるということです。ひょっとしたら、職場が暑いと思っているのは自分だけではなく、言わないだけでみんな暑いと思っているのかもしれませんよ。
職場が暑い!どうすれば良い?
最近の夏の暑さは「災害級」ですから、根性論は通用しません。下手に暑さを我慢すれば体調を崩しますし、場合によっては重度の熱中症で命が危険に晒されることもあります。
では、自分だけかもしれないけど職場が暑いと感じたら、どうすれば良いのでしょうか?一般的な対処法としては、「自分のデスク周りだけでも涼しくする」ことです。
家電量販店やホームセンターなどでUSB給電の卓上ファンや小型扇風機が簡単に手に入りますから、それを活用するのです。空調が効いている中で発生する風は冷たいですから、卓上ファンや小型扇風機を使うことで多少は涼しく感じられます。
首元を冷やすネッククーラーや椅子に敷く冷却ジェルマットなどを活用するのも良いかもしれませんね。また、インナーを冷感素材のものにするだけでも体感温度は変わります。
「生産性に影響する」と相談
小型扇風機やネッククーラーなどを使っていると、職場によっては上司から注意を受けることもあります。
小型扇風機などを使って自分の周りだけ涼しくするのが難しいなら、「生産性に影響する」として上司に相談するのも1つの手段です。「暑くて仕事ができない」など感情論で訴えると、「暑いと思わなければ良い」と根性論で返されます。
そこで、「これだけ暑いと仕事に集中できずミスが増えて生産性が落ちる」と上司に相談するのです。根性論が信条の上司でも生産性が落ちると言われると、さすがに対応せざるをえません。
兵庫県の姫路市役所で2019年に、室温と作業効率の関係についての実証実験が行われました。(https://urban-innovation-japan.com/project/himeji-city/2019-4/air-conditioner-25c/)
エアコンの設定温度を28℃から25℃に下げたところ、1か月の光熱費は7万円増えました。ところが、職員1人当たりの残業時間が前年同月比で3時間近くも減ったのです。
姫路市役所には約4000人の職員が居り、残業時間が減ったことで約4000万円の残業代が節約できたという結果になりました。
職場が暑いと作業効率が落ちるのは姫路市役所の実証実験からも明白です。こうした生産性が落ちた実例を出して相談すれば、根性論の上司も素直に耳を傾けてくれるのではないでしょうか。
周りの同意を取り付ける
誰も口にしないだけで、自分以外の社員もみんな職場が暑いと思っているかもしれません。仕事中や休憩時間に周りの同僚に「ちょっと暑くないですか?」などと声をかけてみると、「ちょっと暑いですね」という答えが返ってくる可能性があります。
「暑くて仕事できないですよね?」ぐらいまで行くと、「それほどじゃない」と否定される可能性の方が高いです。「ちょっと暑くないですか」ぐらいの軽い感じだと、それほど暑いと感じていなくても同意を得やすいです。
数人から「ちょっと暑い」という同意を得たら、自分の周りの総意として上司や総務の責任者に話を持っていくと良いでしょう。1人だけの意見だと一蹴されますが、数人の総意となると会社側としても何らかの対応をせざるをえないはずです。
「上司や総務に相談するんだけど」と前置きすると、同僚も構えるので暑いことに対して同意が得られないかもしれません。「今日ちょっと暑くない?」とか「最近暑いですよね」など、あくまで世間話程度の軽さの方が同意を得られやすいはずです。
「体調管理」カードを切る
最終手段ですが、「体調管理」カードを切って席替えや部署移動を願い出るという方法もあります。周りから同意が得られず、実際に暑いと感じているのが自分だけなら、この方法を使うしかありません。
実は「暑い職場」は法令違反となる恐れがあるのです。
「労働契約法」で、会社側には社員が身体・生命の安全を確保して働けるように配慮する「安全配慮義務」が課されています。暑い中で働き続けると熱中所になる恐れがあり、暑い職場で社員を働かせることは労働契約法の安全配慮義務違反と見なされる可能性があるのです。
また「労働安全衛生法」では、快適な作業環境の形成や維持管理が労災防止義務として会社側に課されています。
さらに労働安全衛生法を元に定められた厚労省令である「事務所衛生基準規則」では、室温18~28℃を保つ努力目標が設定されています。室温が18~28℃なので、空調の設定温度が28℃でも室温が30℃だと事務所衛生基準規則に違反していることになるのです。
こうした法令や規則を出しながら、「暑い中で働き続けると体調管理がままならない」として席や部署の移動を申し出るわけです。
法令や規則に違反すると会社の信用を落とすので、席や部署の移動を認めてもらえる可能性があります。席や部署の移動が認められなくても、空調の設定温度を下げたり、ゾーニングができる空調設備を更新してもらえたりするかもしれません。
まとめ
職場で暑いと感じているのは自分だけではなく、口にしないだけで周りの同僚も暑いと思っている可能性があります。周りから「暑い」と同意が得られれば、会社側としても何らかの対応を取らざるをえません。
暑いと生産性が落ちる実験結果もありますし、職場が暑いのは法令違反となる可能性もあります。こうした事例を出しながら会社側に相談すれば、職場が自分だけでなく周りにも快適な環境に生まれ変わるはずですよ。