先日オーディオ好きの友人が「かつて『Akai』というオーディオ機器ブランドが
あった」と話していました。
私はオーディオにはあまり興味がありませんが、馴染みのない電機メーカーには
興味があるので「Akai(アカイ)」について調べてみました。
Akaiはどこの国のメーカー?
「Akai(アカイ)」は、アメリカのオーディオメーカー「インミュージック」の
音楽制作機器ブランドです。
正確に言うと、「Akai Professional」がインミュージックのブランドとなります。
ミニキーボードやサンプラー、フィジカルコントローラーなどを
Akai Professionalブランドで販売しているようです。
(http://akai-pro.jp/index.php)
私は音楽の素養がまったくありませんから、
Akai Professionalの製品はどのように使うものかよく分かりません。
ただ製品のレビューを見る限りでは、
多少ネガティブな意見も見られるものの、総じて高い評価を受けています。
シンプルで操作方法もそれほどややこしくないので初心者でも使えると好評です。
Akaiのルーツは日本
日本人なら「Akai(アカイ)」という単語に何となく聞き馴染みがあると思いますが、
それもそのはずで「Akai」は「赤井」から来ています。
Akaiは今でこそアメリカのメーカーブランドですが、
元々は日本にルーツがあるのです。
1946年に創業した「赤井電機」が、
音響機器や映像機器のブランドとして使っていたのが「Akai」です。
40代以上でAV機器に興味がある人なら、
かつてAkaiというブランドのAV機器があったのを覚えているのではないでしょうか。
私はAV機器にそれほど興味が無いものの、
父方の親戚にAV機器好きが居ました。
兄や私のために父親がその親戚から貰ってきた古いラジカセが、
確かAkaiだったと記憶しています。
ラジカセを買えないほど家計が苦しかったわけではなく、
兄も私もどうせすぐにラジカセに飽きるからお下がりで十分という父親の判断です。
中学生ぐらいになって親戚から貰ったラジカセを見て、
当時の私にはあまり馴染みのないブランドだったので何となくですが覚えています。
日本におけるAV機器のパイオニア的存在
Akaiブランドの元になった赤井電機は、
日本におけるAV機器のパイオニア的存在です。
「パイオニア」というAV機器メーカーもあるのでややこしいですが、
文字通り「先駆者」という意味です。
赤井電機は1954年に日本で初めてテープレコーダーの開発に成功、
アナログテープデッキでは世界で初めてオートリバース機能を採用します。
若い人には馴染みがないでしょうが、
我々40代が中高生の頃はまだカセットテープを使っていました。
買ったりレンタルしたCDをカセットテープにダビングして、
ポータブルプレイヤー(ウォークマン)で聞くといったことをしていましたね。
カセットテープにはA面とB面があって、A面が終わるとカセットテープを
表裏ひっくり返してデッキにセットB面を再生します。
カセットテープをひっくり返す作業をしなくても、
A面からB面に自動的に切り替わるのがオートリバースです。
さすがに私は分からないのですが、
パソコンの記憶媒体としてもカセットテープが使われていたとのことです。
(https://www.mizutani-its.com/Webkiji/200509.html)
最近はゲームアプリにもなっている歴史シミュレーションゲーム「信長の野望」も、
最初に発売された時はカセットテープでした。
調べてみたら、
現在でも中古ショップでカセットテープ版の信長の野望が販売されています。
(https://www.suruga-ya.jp/search?category=65204&search_word=&brand=KOEI%5C%28%E5%85%89%E6%A0%84%5C%29&media=%E3%82%AB%E3%82%BB%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%86%E3%83%BC%E3%83%97)
現代ではパソコンのデータ保存にはハードディスクやSDカード、USBメモリなど
デジタル機器が使われるのが一般的です。
しかし、それらのデジタル機器の元を辿っていくとカセットテープにたどり着きます。
さらに、そのカセットテープにデータを入れるテープレコーダーを開発した
赤井電機に行きつくのです。
Akaiブランドの変遷
現在はアメリカのインミュージックがAkaiブランドを所有していますが、
それまでにはAkaiブランドの所有者は様々に変遷しています。
Akaiブランドの最初の所有者である赤井電機は、テープレコーダーの開発に成功、
オープンリールやテープデッキなども扱う総合AV機器メーカーとなります。
国内はもちろん海外でも高級オーディオとしてAkaiブランドは人気となり、
東証1部上場企業となりました。
(東証1部は現在の東証スタンダードや東証プライム)
しかし1980年代に入ると「CD」によるオーディオ機器のデジタル化が進み、
カセットテープを使うアナログ機器は衰退していきます。
大手電機メーカーはデジタル化に素早く対応したものの、
赤井電機はデジタル化への対応が遅れて経営不振に陥ります。
経営不振の打開策として、1984年にシンセサイザーやサンプラーなどの
電子楽器に参入するため「Akai Professional」というブランドを立ち上げました。
オーディオ機器のAkaiは高級ブランドでしたが、
電子楽器のAkai Professionalは高性能かつ低価格で成功します。
Akai Professionalは国内外で人気となったものの赤井電機を立て直すには至らず、
大手電機メーカーである三菱電機の傘下となります。
三菱電機と組んで「A&D」という新しいブランドを立ち上げ、CDプレーヤーや
DATデッキなど家庭用オーディオ機器の製造販売を開始しました。
しかしCDプレーヤーは後発、DATデッキは浸透せずで売り上げが伸びず、
1992年に赤井電機はオーディオ機器から撤退してしまいます。
1999年に好調のAkai Professionalを赤井電機から分離独立させたことで経営が
さらに苦しくなり、2000年についに赤井電機は倒産してしまいました。
Akai Professionalは別会社として存続、Akaiブランドは香港のメーカーに
引き取られたとのことです。
Akai Professionalの製品は日本国内でも購入できますが、香港メーカーに
引き取られたAkaiブランドの製品は少なくとも日本ではほとんど見かけません。
Akai Professionalも破綻
赤井電機から独立したAkai Professionalは最初こそ好調でしたが、
2000年代に入ると業績が右肩下がりとなります。
奇しくも赤井電機の倒産と前後して、
Akai Professionalも経営が苦しくなってくるのです。
著作権の規制強化によってサンプリングが衰退、パソコンやタブレットでも
音楽が作れるようになったことがAkai Professionalが苦しくなった原因です。
早めに対応できれば良かったのですが、デジタル対応が遅れた赤井電機と同様に
対応が遅れたため、2005年12月に破綻します。
メーカーとしてのAkai Professionalは破綻により消滅しましたが、
ブランドとしてのAkai Professionalはインミュージックに引き継がれ現在に至ります。
赤井電機もAkai Professionalも現在はメーカーとしては存在しておらず、
日本国内ではAkai Professionalがオーディオブランドとして残っているだけです。
ブランドを立ち上げた当初は先見性があったのに、赤井電機もAkai Professionalも
時代の変化に付いていけずに倒産したのは皮肉ですね。
Akaiの製品
2024年現在はAkaiブランドの製品には、大きく分けて2種類あります。
1つはインミュージックに引き継がれた「Akai Professional」ブランドの製品で、
もう1つは香港のメーカーに引き取られた「Akai」ブランドの製品です。
Akai Professionalの製品は最初の方でも紹介しましたが、
ミニキーボードやサンプラーなどの音楽関連の機器となっています。
香港メーカーに引き取られたAkaiブランドは、公式サイトを見る限りは
・テレビ
・パソコン
・洗濯機
・冷蔵庫
・電子レンジ
・掃除機
など一般的な家電を製造販売しているようです。
(https://akai.global/)
公式サイトにはあまり詳しい情報が掲載されておらず、さらに調べてみると、
どうやらインドで販売されているみたいですね。
(https://akaiindia.in/)
Akaiブランドの製品は比較的安いが・・・
インドで販売されているAkaiブランドの製品は、
日本人の感覚からすると比較的安いです。
例えば43V型のAkaiブランドの4Kスマートテレビは、
インドでは5万円台で販売されています。
日本で大手メーカーの43V型4Kスマートテレビを購入するとなると、
安くても7~8万円台ですから、Akaiブランドは少し安めです。
洗濯機も日本だと7~8万円で販売されている容量8.5kgサイズのものが、
インドのAkaiブランドだと3万円台となっています。
日本で購入するよりも安めなのでAkaiブランドの家電が欲しいと思うことが
あるかもしれませんが、日本で買うのは難しいです。
Akaiブランドを現在所有しているのは香港のメーカーですが、日本では
ブランド展開しておらず、家電量販店などの店舗では取り扱いがありません。
じゃあネット通販となりますが、海外メーカーの電化製品を専門的に
取り扱っている通販サイトでもAkaiブランドの製品は取り扱っていないです。
Akaiの公式サイトでもオンライン購入はできないとなっていますし、
日本でAkaiブランドの家電を購入する手段がありません。
直接インドに行ってAkaiブランドの家電を購入して日本に持って帰ってくる、
といったことはできるかもしれないです。
ただ往復の旅費や家電を送る送料を考えると日本で家電を買う方が断然安いので、
日本でAkaiブランドの家電を使うのは現実的ではないですね。
日本では見かけなくなった家電もAkaiにはある
日本で洗濯機と言えば縦型やドラム型の全自動洗濯機ですが、
Akaiにはまだ「2槽式」の洗濯機もあります。
私のような40代やそれ以上の年齢の人にとっては、
洗濯機と言えば2槽式のイメージではないでしょうか。
若い人は知らないかもしれませんが、
洗濯槽と脱水槽が分かれているのが2槽式の洗濯機です。
全自動洗濯機は洗濯も脱水も同じ槽で行いますが、
2槽式では洗濯槽での洗濯が終わったら脱水槽に洗濯物を移し替えて脱水します。
全自動洗濯機より洗浄力が高く、洗濯と脱水が同時にできるので
洗濯物が多くても対応できるなどのメリットが2槽式洗濯物にはあります。
脱水機能も全自動洗濯機に比べると高いですから、
クリーニング店では現在でも2槽式洗濯機が使われていることがあるのです。
私の実家で使っていた2槽式洗濯機が数年前に壊れたので、
現在は全自動洗濯機に買い替えました。
しかし母親は使い慣れた2槽式の方が良かったようで、買い替えのために行った
家電量販店で店員さんに2槽式は無いのかと聞いていましたね。
残念ながら店舗での取り扱いが無かったので全自動洗濯機を購入、
現在は全自動洗濯機に慣れて苦もなく使いこなしているようです。
Akaiブランドの2槽式洗濯機を見た時、
実家のことを思い出して少し懐かしい感じがしました。
まとめ
「Akai(アカイ)」は元々は日本の赤井電機のブランドで、
現在はAkaiとAkai Professionalの2つのブランドに分かれています。
赤井電機は既に倒産しており、Akaiは家電ブランドとなって香港のメーカーに、
Akai Professionalはアメリカのメーカーに引き取られています。
Akai Professionalのオーディオ機器は日本でも購入可能ですが、
Akaiの家電は日本では販売されておらず購入は難しいです。